呪文名 | ポータス 移動キーを作れ |
英名 | Portus |
分類 | チャーム |
効果 | 移動キー(ポートキー)を作る |
『ハリー・ポッター』シリーズには、魔法使いたちが使う魅力的な移動手段がたくさん登場します。空飛ぶ箒、暖炉をつなぐ煙突飛行粉、そして一瞬で姿を消す「姿現し」…。
その中でも、物語の鍵を握る重要なアイテムとして登場するのが「移動キー(ポートキー / Portkey)」です。
「移動キーって、あの古いブーツのこと?」「トライウィザード・トーナメントの優勝杯もそうだっけ?」「どうやって作るの?」
この記事では、そんな「移動キー」と移動キーを作り出す呪文「ポータス」について詳しく解説していきます。
こんな方におすすめ
- 移動キー(ポートキー)の基本的な意味と役割
- 移動キーを作り出す呪文「ポータス」
- どうやって移動するの?その仕組みと特徴
- 勝手に作っちゃダメ?魔法省のルール
- 物語の重要な場面で使われた移動キー
- 「姿現し」や「煙突飛行粉」との違い
Contents
移動キー(ポートキー)とは?
移動キー(ポートキー)とは、触れた人や物を、あらかじめ決められた場所へ瞬時に移動させる魔法がかけられたアイテムのことです。魔法使いが長距離を移動したり、特定の場所へ確実に人や物を送り届けたりする際に使われます。
魔法使いが日常的に使う移動手段というよりは、計画的な移動や、少し特別な目的のために用意されることが多いアイテムです。
なぜ「ありふれた物」が使われるのか?
移動キーには、マグル(非魔法族)に魔法の存在を気づかれないよう、わざと目立たない「ありふれた物」が選ばれるのが一般的です。
J.K.ローリングによれば、もしマグルの手に渡ったとしても、それが価値のないガラクタに見えることで、興味本位で拾われたり、子供たちが誤って触れてしまったりする危険を避けるためです。
作中では、以下のような物が移動キーとして登場しました。
- 古びたブーツ
- タイヤ
- 空き缶
- しなびたテニスラケット
- トライウィザードの優勝杯(例外)
- やかん など
道端に落ちていても、誰も魔法のアイテムだとは疑わないような物ばかりですね。
語源・由来は?
「移動キー(Portkey)」という名前は、フランス語の「porter(運ぶ)」と、秘密やトリックという意味の「キー(鍵)」に由来します。
移動キーを作る呪文|ポータス(Portus)
これらの「ただの物」を魔法の移動キーに変えるのが、呪文「ポータス(Portus)」です。
熟練した魔法使いが杖を対象物に向け、「ポータス!」と唱えることで、その物に移動機能が付与されます。この際、行き先と、場合によっては移動が発動する時間も設定されます。
移動キーの仕組みと特徴
移動キーはどのように機能するのでしょうか?その特徴を見ていきましょう。
触れるだけで瞬間移動
移動キーの最大の特徴は、起動時間になった時に触れているだけで、術者の魔法レベルに関係なく誰でも移動できる点です。
移動する瞬間、まるでお腹のあたりを強い鉤(かぎ)でグイッと引っ張られるような、独特の不快な感覚に襲われると描写されています。
青白い光
移動キーが起動する際、青白い光を放つことがあります。これは、移動キーが魔法の力で活性化しているサインです。
一方通行?それとも往復可能?
基本的に移動キーは、設定された目的地への片道切符として機能します。
ただし、『炎のゴブレット』で登場したトライウィザードの優勝杯のように、行き先(墓場)で再び触れると元の場所(ホグワーツ)に戻れる、往復機能を持つ特殊な例も存在します。これは、おそらく作成者(偽ムーディ)が意図的に設定したものでしょう。
複数人での同時移動
移動キーは、指定された時間に同時に触れていれば、何人でも一緒に移動することが可能です。
クィディッチ・ワールドカップへ向かう際、ウィーズリー一家やハリーたちが一緒に古いブーツに触れて移動したのが良い例です。
移動キーの使用ルール|魔法省の厳格な管理
便利な移動キーですが、誰でも自由に作って使えるわけではありません。その作成と使用は、魔法省(Ministry of Magic)によって厳しく管理されています。
なぜ許可が必要なのか?
もし誰もが勝手に移動キーを作ってあちこちに移動したら、どうなるでしょうか?
- 魔法使いが意図せずマグルの前に現れてしまう(国際機密保持法違反)
- 犯罪者が簡単に逃亡したり、テロ行為に利用したりする
- 移動先で事故が起こる
こうした混乱や危険を防ぐため、移動キーの作成・設置には魔法省の魔法運輸部(Department of Magical Transportation)の許可が必須とされています。
無許可使用のリスク
J.K.ローリングによると、許可なく移動キーを作成・使用することは違法行為であり、発覚した場合には魔法省によって厳しく罰せられます。
これは、移動先での事故や、魔法界の秘密が漏洩するリスクを最小限に抑えるためです。
国際的な大規模イベントでの利用
移動キーは、個人の移動だけでなく、クィディッチのワールドカップのような国際的な大規模イベントにおいても極めて重要な役割を果たします。
J.K.ローリングによると、このようなイベントの際には、開催国の魔法省が他国の魔法省と協力し、観客を安全かつ秘密裏に会場へ送り届けるため、世界中に何百という移動キーを設置・管理するとのことです。
これは魔法界における大規模な物流・輸送オペレーションと言えるでしょう。
移動キーの名シーンを振り返る
移動キーは、ハリー・ポッターの物語の中で、時に楽しく、時に恐ろしい形で、重要な役割を果たしてきました。
ハリー・ポッターと炎のゴブレット|クィディッチW杯への移動
ハリーはウィーズリー一家やディゴリー親子と共に、クィディッチ・ワールドカップ観戦のため移動キーを使用します。
夜明け前、指定された丘の上で彼らが触れたのは、みすぼらしい古いブーツでした。指定時刻になるとブーツは青白く光り、一行を会場近くの荒れ地へと一瞬で運び去りました。
この出来事は、ハリーにとって初めての移動キー体験であり、その独特な移動感覚(へそを鉤で引っ張られるような感覚)や着地の難しさを読者に印象付けました。
また、魔法省の許可を得て計画的に、かつ大人数で安全に長距離を移動するための、移動キーの典型的で合法的な使用例として描かれています。この移動をきっかけに、ハリーはセドリック・ディゴリーと親しくなります。
ハリー・ポッターと炎のゴブレット|三大魔法学校対抗試合
三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)の最終課題で、迷宮の中心に置かれた優勝杯は、最も重要な、そして最も悲劇的な移動キーとして登場します。
ハリーとセドリックが栄光の杯に同時に触れた瞬間、それは二人をヴォルデモートが待ち受けるリトル・ハングルトンの墓場へと転送する罠として作動しました。これはヴォルデモートの復活計画の一環であり、デスイーターであるバーティ・クラウチ・ジュニア(ポリジュース薬でムーディに化けていた)が魔法省に気づかれずに仕掛けた違法な移動キーでした。
この移動キーによりセドリックは命を落とし、ヴォルデモートは完全復活を遂げます。物語の転換点であり、移動キーが悪用された際の恐ろしさを象徴するシーンです。杯にはホグワーツへ戻る機能も設定されていました。
ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団
神秘部の戦いでの死闘の後、ダンブルドアはハリーをヴォルデモートの魔の手から守るため、緊急措置として移動キーを使用します。
ホグワーツの校長室に戻ったダンブルドアは、やかんに「ポータス」の呪文を素早くかけ、それを即席の移動キーに変えました。ハリーがそれに触れると、即座に不死鳥の騎士団の本部があるグリムロード・プレイス12番地へと転送されました。
この場面は、魔法省の厳格な管理下にある移動キーが、ダンブルドアのような強力な魔法使いによって、緊急時には許可なく迅速に作成・使用されうることを示しています。ハリーの安全確保を最優先するダンブルドアの判断力と、移動キーの即時性・確実性が描かれた重要なシーンです。
他の移動魔法との違いを比較
ハリー・ポッターの世界には、移動キー以外にも様々な移動手段があります。それぞれの違いを見てみましょう。
姿現しとの違い
「姿現し(Apparition)」は、術者自身の魔力と強い意志によって、ある場所から別の場所へ瞬時に移動する高度な魔法です。移動キーが「物」を介して指定場所に運ばれるのに対し、姿現しは術者自身の能力で「任意の場所」へ移動する点が大きく異なります。
ただし、姿現しは非常に難易度が高く、習得するには厳しい訓練と試験が必要です。失敗すると身体の一部が移動前と移動先に分裂してしまう「スプリンチ(体の分裂)」という恐ろしい事故につながる危険性もあります。そのため、基本的に17歳以上の魔法使いしか行えません。
一方、移動キーは術者の魔法レベルや年齢に関係なく、触れさえすれば誰でも移動できる手軽さがありますが、行き先はあらかじめ固定されており、移動キーとなる「物」が必要です。自由度とリスクを取るなら姿現し、確実性と安全(※罠でない限り)を取るなら移動キー、といった使い分けが考えられます。
煙突飛行粉との違い
「煙突飛行粉(Floo Powder)」は、暖炉から暖炉へと移動するための魔法の粉です。移動したい暖炉に粉を投げ入れ、緑色の炎に包まれたら、はっきりと行き先の暖炉の名前を告げて足を踏み入れることで移動できます。
移動キーとの大きな違いは、移動できる場所が「暖炉ネットワーク」に接続された暖炉に限られる点です。建物内に暖炉がない場所へは行けません。また、移動キーが一瞬で目的地に到着するのに対し、煙突飛行粉は暖炉の中をぐるぐる回転しながら高速で移動する感覚です。
手軽に利用できる点は煙突飛行粉のメリットですが、行き先をはっきり言わないと間違った場所に出てしまうリスクもあります。移動キーは物が存在し、起動時間に触れれば確実に指定場所へ行ける点で異なります(ただし、その物が罠である可能性は否定できません)。
騎士バスとの違い
「騎士バス(Knight Bus)」は、困っている魔女や魔法使いのための緊急輸送手段として現れる、紫色の三階建てバスです。杖を掲げて合図すると、どこからともなく猛スピードでやってきます。
移動キーが特定の個人やグループのために事前に準備される計画的な移動手段であるのに対し、騎士バスは困ったときに呼び出す公共交通機関のような性質を持っています。移動キーは瞬間移動ですが、騎士バスは物理的に道路(や障害物)をすり抜けながら目的地まで走行するため、移動に時間がかかります。乗り心地も、急発進・急停車を繰り返し、ベッドが滑るほど快適とは言えません。
緊急時に頼れる存在ですが、移動キーのように一瞬で長距離を移動したり、ピンポイントで特定の場所に送ったりするのには向きません。
箒との違い
魔法使いにとって最もポピュラーな個人用移動手段が「箒」です。跨って空を飛ぶことで、自由に移動できます。
移動キーとの最大の違いは、瞬間移動ではなく「飛行」である点です。自分の意志で好きな方向へ自由に移動できるメリットがありますが、移動キーのように一瞬で長距離を移動することはできません(高性能な箒でも時間はかかります)。また、飛行中は天候の影響を受けやすく、マグルに見られてしまうリスクも伴います。
どの移動魔法を選んだら良いの?|移動キーのメリット
移動キーは、「特定の場所へ」「確実に」「誰でも(複数人でも)」移動させたい場合に特に有効な手段と言えます。
移動キーの大きな利点は、何と言っても『姿あらわし』が使えない人々にとって非常に有効な移動手段であることです。
例えば、まだ試験を受けられない未成年の魔法使いや、病気、高齢などで長距離の『姿あらわし』が困難な人々でも、移動キーであれば安全かつ確実に、しかも集団で一度に長距離を移動できます。この点が、他の移動手段にはない大きなメリットと言えるでしょう。
一方で、「姿現し」のように自由に行き先を選んだり、「煙突飛行粉」のようにネットワーク網を使って気軽に移動したりすることはできません。
移動キーに関する事故
J.K.ローリングによると、移動キーが厳重に扱われている中でも、マグルを巻き込んだ予期せぬ事故は発生しています。
特に記憶に残るのは、2003年に起きた「セレスティナ・ワーベックコンサート事件」です。
その日、ロンドンのクラパム・コモン(公園)に隠されていた、目立たない古い運動靴の形をした移動キーがありました。これは、大勢の魔女や魔法使いをある場所へ運ぶために用意されたものでしたが、あろうことか、マグルの犬の散歩人2人が連れていた犬たちがその運動靴を面白がって持ち去ってしまったのです。
結果として、その犬と飼い主であるマグル2人は、意図せずして人気魔法歌手セレスティナ・ワーベックのコンサート会場へと飛ばされてしまいました。一方、本来の使用者である大勢の魔女や魔法使いは、移動キーが見当たらない公園で、必死になって古いポテトチップスの袋やタバコの吸い殻まで手当たり次第に掴んでは移動しようと試みるという、滑稽ながらも切実な状況に陥ったそうです。
さらに驚くべきことに、コンサート会場に飛ばされたマグルの一人は、なんとセレスティナ本人によってステージに招かれ、「鍋いっぱいの熱くて強い愛を(A Cauldron Full of Hot, Strong Love)」をデュエットする羽目になりました。
その後、慌てふためいた魔法省の役人によって、そのマグルには忘却呪文(オブリビエイト)が施され、一時は効果があったかのように見えました。しかし、このマグルは後に、セレスティナの世界的な大ヒット曲と不気味なほどよく似たポピュラーソングを作曲して発表してしまったのです。これにはセレスティナ本人もご立腹だったとか。
登場作品
まとめ|移動キーの魅力と危険性
ハリー・ポッターの移動キー(ポートキー)は、触れるだけで遠く離れた場所へ一瞬で移動できる、非常に便利な魔法アイテムです。物語の中では、楽しい冒険の始まりから、悲劇的な事件の引き金まで、様々な形で登場し、読者に強い印象を与えました。
その利便性の一方で、作成には魔法省の許可が必要という厳格なルールが存在し、無許可での使用や悪用は大きな危険を伴います。「炎のゴブレット」での出来事は、移動キーが持つ潜在的な脅威をも示唆していると言えるでしょう。
ありふれた日用品に隠された、瞬間移動の魔法「移動キー」。その仕組みやルールを知ることで、ハリー・ポッターの世界がさらに深く、面白く感じられるはずです。
あなたはどの移動魔法を使ってみたいですか?
【参考】
Portkeys By J.K. Rowling Originally published on pottermore on Aug 10th 2015
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