2021年秋日本上陸!「ハリー・ポッターと魔法の歴史展」のすべて

ハリー・ポッターと魔法の歴史

「ハリー・ポッターと魔法の歴史展」とは、大英図書館が2017年に企画・開催した展覧会「Harry Potter: A History of Magic」の国際巡回展。2018年のニューヨークに続き、ついに日本での開催が決定されました。大英図書館による大規模な展覧会が日本に巡回するのは初めてのことで、その充実したコレクションの一端を見ることができます[1]


ハリー・ポッターシリーズといえば現代のファンタジー文学として、20年にわたり世界的な人気を誇っています。その物語の背景には、日本からは河童が紹介されていたりと、世界各国に伝わる魔法や呪文、占いなどが関わっており、J.K.ローリングに多大な影響を与えました。そういった実存した魔法に関わるアイテムを生で見ることができるのは、非常に貴重な機会です。

加えて、日本初公開となる J.K.ローリングの直筆原稿やスケッチなども展示されます。

今回はHP info Japanが訪れたニューヨークでの巡回展を踏まえて、みどころをたっぷりと紹介します!

BRITISH LIBRARY / GOOGLE ARTS & CULTURE

展示の見どころ

第一章 旅

著者J.K.ローリングがハリー・ポッターシリーズを生み出し、世界的ヒットまでたどり着いた道のりについての展示品が飾られています。

下の写真左はJ.K.ローリングがイギリス中の出版社に持ち込んだ第一作目『ハリー・ポッターと賢者の石』のシノプシスです。 契約を断られ続けた中、Bloomsbury出版の担当者の目にようやく止まり、出版が実現しました。

写真右は手書きのホグワーツのスケッチ。ホグワーツ全体の配置が描かれており、湖には巨大なタコが泳いでいたり、暴れ柳も確認できます。

展示品抜粋: 出版社に持ち込んだ企画書、ホグワーツのスケッチetc.

第二章 薬学

Portrait of Professor Severus Snape by Jim Kay, for The Prisoner of Azkaban
BRITISH LIBRARY / GOOGLE ARTS & CULTURE

ジム・ケイがイラスト版『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人<イラスト版>』の中で描いたスネイプ教授。この絵にはスネイプというキャラクターを表現する、様々な要素が隠されています。例えば、瓶に入ったモグラはスネイプが不死鳥の騎士団のスパイであることを意味します。モグラは英語でmoleですが、もう一つ「密偵」という意味も持ちます。手元のスズランは英語で lily of the valleyですが、ハリーの母リリーへの永遠の愛を表しています。ハサミはスネイプが考案した呪文「セクタムセンプラ」、クラヴァットとテーブルの緑色はスリザリン寮の色を表しています。

展示品抜粋: ジム・ケイによるスネイプ教授のイラスト、実存した大鍋、実際のベゾアール石etc.

第三章 錬金術

ハリー・ポッターシリーズ第一作目のタイトルにもなっている「賢者の石」は、永遠の命を与える「命の水」を生成することができるというもので、中世ヨーロッパの錬金術師はその獲得に奮闘しました。これはニコラス・フラメルとダンブルドアによって研究され、ヴォルデモートから隠すためグリンゴッツ魔法銀行からホグワーツに移されました。物語の中のフラメルは賢者の石から作ったエリクサーによって665 歳まで長生きしましたが、実際には1418 年に他界しています[1]

展示品抜粋: 『Splendor Solis(太陽の輝き)』、『The Book of the Seven Climes(七気候の書)』、古代の化学etc.

第四章 薬草学

ホグワーツの授業の一つである薬草学。ハリー・ポッターシリーズには、引き抜くと叫び声をあげる「マンドレイク」をはじめ「ヘレボルス」「ハナハッカ」などの薬草が魔法薬の材料として登場しますが、それらはいずれも実際に存在する植物です[1]。J.K.ローリングが執筆において、作品に登場する薬草や魔法薬の名前をつける際に参考にした『カルペパー ハーブ事典』も展示されています。

こちらのJ.K.ローリングが描いたスプラウト先生のスケッチは、数あるスケッチの中でも最も重要な一枚です。『ハリー・ポッターと賢者の石』の出版の約7年前である1990年12月30日に描かれました。

この絵を描いたのは1990年12月30日で、はっきりと覚えています。この日私は友人の家にいて、ポッターの本を書き始めてから六ヶ月ほど経過していました。友人たちは皆寝静まっている中、私は夜更かしをして映画『王になろうとした男』を観ていたのです。なぜ私がこんなにも記憶が確かかというと、この絵を描きながら映画を見ている途中で、私の母が250マイル先で亡くなったからです。翌日に母が亡くなったという電話をもらいました。

The Times

展示品抜粋: J.K.ローリングのスケッチ、『カルペパー ハーブ事典』、マンドレイクetc.

第五章 呪文

誰もが知っている呪文「アブラカダブラ」に初めて言及したとされる13世紀の書物など、呪文に関する文献や、魔女に関するアイテムが展示されています[1]

展示品抜粋: J.K.ローリング手書きの組み分け帽子の歌、ほうき、愛の呪文、アブラカタブラ、透明になる方法etc.

第六章 天文学

ホグワーツの必修科目である天文学。『不死鳥の騎士団』ではケンタウルスが教師を務めました。また、天体はシリウス・ブラックやドラコ・マルフォイなど、登場人物の名前にも大きな影響を与えています。

こちらはJ.K. ローリングが『ハリー・ポッターと賢者の石』の執筆中に書いたホグワーツの各教科の担当教職員リスト。天文学を教える教員は、当初はオーレリア・シニストラでしたが、後にオーロラ・シニストラに変更されています[2]

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展示品抜粋: 最古の天体表、天球儀、ケンタウルス、シリウス、レオナルド・ダ・ヴィンチのノートetc.

第七章 占い

ハリー・ポッターシリーズでは、「闇の帝王を倒す力を持つ男の子が7月の終わりに生まれる」という予言が、物語を通じて重要な役割を果たします。水晶占い、手相占い、タロットや茶葉占いなど、未来を予知するさまざまな占いが実践されてきました[1]。映画『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』では、紅茶占いがシリウスを暗示しました。

展示品抜粋: 魔女の魔法の鏡、タロットカード、水晶玉、手相占い、紅茶占いetc.

第八章 闇の魔術に対する防衛術

魔法は多くの文化において、悪の力に対抗するものとして使用されてきました。例えば、ホグワーツ魔法学校の授業でスネイプ先生やルーピン先生が紹介した狼男、河童、バジリスクといった悪の生物から身を守るものとして、魔除けのお守りや呪文などが生まれたのです[1]

展示品抜粋: ジム・ケイによるルーピン先生のスケッチ、狼男に関する文献『人間を貪り食らう狼男』、河童、実存した魔法の杖、バジリスクetc.

第九章 魔法生物の飼育

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中世の寓話集や近世の博物学の本などには象などの一般的な動物と並んで、ユニコーンやフェニックス、ドラゴンといった想像上の生物が描かれていました。ライオンの胴体に人間の頭部と鳥の羽をもつスフィンクスのように、種が混ざり合った生物も見られます。ホグワーツ魔法学校の生徒の中には、「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」の主人公ニュート・スキャマンダーのように、魔法動物学者になる者もいました[1]

展示品抜粋: 『賢者の石』の下書き、J.K.ローリングのゴーストのスケッチ、巨人、不死鳥、ヒッポグリフ、ユニコーンetc.

第十章 過去、現在、未来

J.K.ローリングが生み出したハリー・ポッターの魔法世界は、発刊から20年以上経った今も、世界中の読者をひきつけてやみません。ここではさまざまな言語で翻訳された書籍や、今も広がり続けるハリーの魔法世界について紹介されています[1]

こちらはJ.K.ローリング手書きの『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』のアウトライン。左の列から時系列、タイトル、プロット、予言、チョウ/ジニー、D.A.(ダンブルドア軍団)、OoP(不死鳥の騎士団)、スネイプ/ハリー、ハグリッドとグロウプとなっており、非常に整理整頓されて書かれています。

展示品抜粋: J.K.ローリング手書きのアウトライン、呪いの子の舞台ミニチュアetc.

「呪いの子」衣装展示

展示の最後は舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』の衣装で締めくくり。これはハリーの息子であるアルバス・セブルス・ポッターたちの時代を描いた物語です。

舞台の演出は米演劇界で最高の栄誉とされるトニー賞を受賞するなど、アクションやマジックが沢山盛り込まれたものとなっています。このことから、衣装デザインではアクションがダイナミックに見えるような工夫がなされており、1700フィートにも及ぶウール生地を使用し、魔法を使ったときの動きを美しく見せるのに完璧な重さのローブが製作されました。

魔法省での立場に少し圧倒されているであろう“成長したハリー”が表現されています。しかし、その中でもメガネ、癖っ毛など“生き残った男の子”らしさが残っているのが見られます。


衣装デザイナーのKatrina Lindsay氏は、ハリー役のジェイミー・パーカーとの会話から、ハリーの見た目には様々な異なるデザインを取り入れるべきだと考えました。例えば、スーツやトレンチコートなど魔法省らしい服装の時もあれば、ジャケット、カーディガンのような柔らかい素材のカジュアルなハリー。しかし、最終的には舞台という芸術表現であることから衣装は一つに統一すべきだと判断し、この二つが融合された形が今のデザインです。

ズボンとブーツはすぐにでも動けるような“戦闘用”であることが意識されています。ジャケットもスーツですが織物を使っています。また、ネクタイはいつも斜めになっています。このミスマッチな要素のコンビネーションがハリーの衣装の重要なポイントです。

多くの学校の制服が進化するように、ホグワーツの制服にも時代の変化が見られます。この“ブレザータイプのローブ”は、ブレザーが卒業式に着るようなガウンと融合したようなデザインで、背中と肩にはカートリッジプリーツが施されています。一番のポイントは、魔法が起きていること表現できるように、アクション場面でローブが風を切るように舞うことです。

ロンの衣装のキーワードは「心地の良さ」。そのため、柔らかい触り心地のニットが採用されました。このセーターはロンのお母さんの手編みという設定ではないですが、そしてウィーズリー家らしさを取り入れるため、これまで手編みセーターを着て過ごしてきた彼が選びそうな雰囲気が表現されています。また、腕の部分にゆとりがあり、裾も長めと、サイズが少し大きめに作られています。しっかり者ではないですが、ゆったりした彼の性格が現れた衣装です。

『呪いの子』のハーマイオニーは高い地位を獲得しているため、シルエットにエレガントさが表現されています。見た目のみならず、舞台上でアクションをしたときにプリーツスカートとトレンチローブが美しく舞うようにデザインがされています。ハーマイオニーは非常にしっかり者ですが、その裏には冒険心も隠されているのです。


Lindsay氏は、ノーマ・ドゥメズウェニが演じることを知っていたため、彼女を頭に思い描きながらデザインに取り掛かったそう。紫という鮮やかな色は、暗い色のローブのキャラクターが沢山いる舞台上で、すぐにハーマイオニーがいることを認識でいるよう、目立たせるという目的があります。映画では衣装の詳細まで見ることができますが、舞台ではそれができないので、色はビジュアルからストーリーを伝えるという点で非常に重要な要素です。ロンのセーターも同様の理由でアイコニックなオレンジ色が採用されています。また、デザインのためのリサーチで紫色が魔法省の色であると知り、この色が選ばれました。

おうちで楽しむ「魔法の歴史」展

コロナウイルス感染拡大の影響で、残念ながら日本での開催が延期してしまった「魔法の歴史」展ですが、来年まで待てない!という方へ、おうちでも楽しめるコンテンツが沢山用意されています!

映像で楽しむ

「ハリー・ポッターと魔法の歴史」は、2018年にNHKの地球ドラマチックでも放送された、BBCが出版20周年を記念して製作したドキュメンタリーです。Amazon Primeで配信中。

内容: 2017年、シリーズ第一作目の出版20周年を記念して、大英図書館で魔法の歴史を紹介する展覧会が開催された。実は「ハリー・ポッター」に登場する杖や薬、呪文といった魔法にまつわる道具やその世界観は、古い言い伝えや慣習に基づいて創り上げられていた!さらに「物語のテーマは『喪失感』」と語るJ.K.ローリング。「ハリーポッター」の誕生秘話が、作者自身の言葉で今、語られる[3]

オンライン展示で楽しむ

Google Arts&Cultureでは、「ハリーポッター:魔法の歴史 大英図書館の探検」と題し、「魔法の歴史」展の展示品と解説を一部見ることができます。

書籍で楽しむ

2017年にイギリスの大英博物館で開催された「魔法の歴史」展の内容を収録した解説本です。

大英図書館の収蔵品はもちろん、J.K.ローリング個人が所有する未公開の貴重な資料から厳選した、貴重な資料が詰め込まれています。天文学、魔法薬学、呪文学、占い学など、ホグワーツ魔法魔術学校の各科目をぜひ深く掘り下げてみてください。

Kindle Unlimited 会員の方は、英語版を無料で読むことができます。

開催概要

展覧会名:「ハリー・ポッターと魔法の歴史」
内 容:ロンドンの大英図書館で 2017~18 年に開催された展覧会の巡回展です。ハリー・ポッターが通う魔法学校のカリキュラムに沿って、「呪文」「錬金術」といった魔法や魔術の歴史を、大英図書館の誇る貴重な資料で紐解きます。

※日本での展示内容が今回紹介したニューヨークの内容と同様であるとは限りません

兵庫

会期2021年秋
会場兵庫県立美術館
主催兵庫県立美術館、大英図書館、読売新聞社

東京

会期2021年冬
会場東京ステーションギャラリー
主催東京ステーションギャラリー[公益財団法人東日本鉄道文化財団]、大英図書館、読売新聞社

公式ホームページ: https://historyofmagic.jp

参考

[1] みどころ
[2] 旅のはじまり
[3] 地球ドラマチック 「ハリー・ポッターと魔法の世界」

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