コラム

「ハリーポッター」純血の魔法使いとは?主要な家系とキャラクター一覧

「ハリー・ポッター」の魔法ワールドに深く根ざす「純血」という概念。生まれによって魔法使いを区別する「血統」という考え方が根強く存在します。

しかし、「純血の魔法使い」とは一体何者で、その思想はどのように形成されたのでしょうか?

この記事では、「純血」の定義とその複雑な背景、純血の魔法族リスト「聖28一族」、そしてマルフォイ家、ブラック家、ウィーズリー家といった主要な純血家系の詳細な歴史と特徴を徹底解説します。

純血の魔法使いの定義とは?

「純血」とは、その家系にマグル(非魔法族)やマグル生まれの魔法使いの血が一切入っていないとされる魔法使いのことを指します。

しかし、この定義は非常に曖昧で、かつ証明が困難です。作中でもシリウス・ブラックがハリーに語るように、厳密な意味での「純血」はほとんど存在しないと言われています。

「純粋な血筋なんてものはありゃしない。(中略)さかのぼっていけば、どんな魔法使いの家系にもマグルの血は混じっているもんだ」

ー『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』よりシリウス・ブラックのセリフを意訳

作者J.K.ローリングも、この「純血主義」は現実世界の偏見や人種差別のメタファーであると述べています。

純血を自称する家系の多くは、家系図からマグルやマグル生まれの存在を意図的に抹消したり、近親婚を繰り返したりすることで、その「純粋性」を維持しようとしてきました。

「純血」概念が生まれた歴史的背景

J.K.ローリングによれば、「純血」という概念が魔法界で特に重要視されるようになったのは、17世紀後半に制定された『国際魔法使い機密保持法』(1692年)と深く関連しています。この法律により、魔法族はマグルからその存在を隠すことが義務付けられ、マグルとの結婚は、魔法の秘密が漏洩するリスクを高める行為と見なされるようになりました。これが、マグルとの関係を持たない「純粋な」血統を尊ぶ風潮を強めたのです。

映画『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』の舞台1920年代アメリカでは、国際魔法使い機密保持法に加え、特に厳しい「ラパポート法」により魔法族とノー・マジ(マグル)の結婚や親密な交友は固く禁じられていました。このため、魔法使いのクイニーとノー・マジのジェイコブの愛は許されず、クイニーの深い苦悩が、後にグリンデルバルドの思想に惹かれる大きな要因の一つとなりました。

純血主義の根拠とその矛盾

純血主義者たちは、『魔法の才能は、特別な血筋によって親から子へと受け継がれるものだ』と強く信じていました。そのため、ハーマイオニーのようにマグル生まれの優秀な魔法使いが現れたとしても、それを『めったにない例外だ』と軽く扱ったり、『どこかで魔法族の血を引いているに違いない』などと言い張ったりしました。

しかし、この考え方についてJ.K.ローリングは、本当の意味で純粋な血筋だけの魔法使いというのは『実際にはほとんどありえない(統計的に不可能である)』ことだと語っています。魔法使いの一族が長く続いていくためには、マグルとも結婚などで血を交わらせることは不可欠であり、もしそうでなければ『(魔法族は)とっくに絶滅していただろう』と述べています。

このことから考えると、「純血」という考え方には、科学的な証拠や裏付けがあるわけではなく、むしろ魔法社会の中で、一部の人たちの考えや都合によって広められた社会的・政治的な価値観だったと言えるでしょう。

また、純血を維持しようとするあまり繰り返された近親婚は、一部の家系、例えばゴーント家のように、精神的な不安定さや暴力性の増大、さらには魔法の才能の減退といった負の結果をもたらした可能性も言及されています。

「聖28一族(The Sacred Twenty-Eight)」とは?

1930年代に匿名で出版された『純血一族一覧 (The Pure-Blood Directory)』には、「真に純血である」とされた28のイギリスの魔法族のリスト、通称「聖28一族」が掲載されました。

このリストには、マルフォイ家、ブラック家、レストレンジ家、ロングボトム家、カロー家、クラウチ家、ゴーント家といった名家が含まれています。

しかし、この「聖28一族」の選定は非常に客観的な基準を欠いたものであり、著者の政治的・思想的な偏向が色濃く反映されていたとされています。

例えば、ウィーズリー家は、純血の家系でありながらマグルとの親交が深かったため、「血を裏切る者」と見なされ、リストから意図的に除外されたか、あるいはリスト入りを自ら拒否したと言われています。

同様に、ポッター家もその姓がマグルにも多いことや、歴史的にマグル擁護の姿勢を隠さなかったことから、このリストには含まれませんでした。これも、著者による意図的な除外、もしくはポッター家自身がリスト入りを拒んだ結果と考えられています。

このように、「聖28一族」のリストは、血統の純粋さだけを客観的に評価したものではなく、著者の価値観や当時の純血主義者たちの間の力関係を反映した、極めて政治的な側面を持つものだったと言えるでしょう。

主要な純血の家系とキャラクター

物語に深く関わる純血の家系とその代表的なキャラクターを見ていきましょう。

1. ブラック家

ブラック家は、魔法界で最も古く、純血を重んじる名家の一つです。

「常に純血であれ(Toujours Pur)」を家訓とし、一族の多くが純血の優越性を強く信じています。そのため、闇の魔術に傾倒する者も少なくありませんでした。

しかし、シリウスやアンドロメダのように、その価値観に反発し家を出る者もおり、複雑な内情を持つ家系です。

主な登場人物

  • シリウス・ブラック:ハリーの名付け親。純血主義の家族と決別。
  • レギュラス・アークタルス・ブラック:シリウスの弟。元デスイーターだが、ヴォルデモートに反旗を翻す。
  • ベラトリックス・レストレンジ(旧姓ブラック):熱狂的なヴォルデモート信奉者。
  • ナルシッサ・マルフォイ(旧姓ブラック):ドラコの母。息子への愛から最終的にヴォルデモートを裏切る行動をとる。
  • アンドロメダ・トンクス(旧姓ブラック):マグル生まれのテッド・トンクスと結婚し、家系から勘当される。ニンファドーラ・トンクスの母。
シリウス・ブラック

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2. マルフォイ家

マルフォイ家は、富裕で魔法界に大きな影響力を持つ純血の名家です。

その名は「ハリー・ポッター」シリーズを通して、純血思想、特権意識、そして闇の魔術との深いつながりを象徴するものとして描かれています。

初代はマグルとも交流して財を成したとされますが、後に純血の地位とマグルへの優越性を強く信じるようになりました。状況に応じて巧みに立ち回り、時には闇の勢力とも手を結び、魔法省の捜査を逃れるため闇の魔術品を隠蔽してきた歴史も持ちます。

主な登場人物

  • ルシウス・マルフォイ:ドラコの父。死喰い人(デスイーター)の一員としてヴォルデモートに仕え、その権力を背景に魔法省にも大きな影響力を保持していました。純血主義者で、マグルやマグル生まれを激しく見下しています。
  • ナルシッサ・マルフォイ(旧姓ブラック):ルシウスの妻であり、ドラコの母。彼女自身も名高い純血のブラック家の出身です。
  • ドラコ・マルフォイ:ハリーのホグワーツ魔法魔術学校での同級生であり、スリザリン寮のライバル。両親の影響を強く受け、純血の選民思想を持ち、ハリーやその友人たちに対して高圧的な態度を取ります。
ドラコ・マルフォイ

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家名の由来と初期の歴史

J.K.ローリングによれば、マルフォイ家の祖先は、1066年のノルマン・コンクエストの際に、初代アーマンド・マルフォイがウィリアム征服王と共にイングランドへ渡ってきたことに遡ります。アーマンドは、ウィリアム王に対して(詳細は不明ながらも疑わしい)魔法を使った奉仕の見返りとして、ウィルトシャー州の肥沃な土地を与えられたとされています。

「マルフォイ(Malfoy)」という姓は、古いフランス語の「mal foi」に由来し、「悪い信仰」や「不実」を意味します。この名は、代々のマルフォイ家の人々が見せる抜け目のなさや、時には倫理的に問題のある行動様式を的確に表していると言えるかもしれません。

富と権力の基盤|マグルとの関わりと闇の魔術

マルフォイ家が魔法界で不動の地位を築き上げた背景には、巧みな財産形成と権力への接近がありました。

驚くべきことに、1692年に「国際魔法使い機密保持法」が施行されるまでは、マルフォイ家は自分たちの利益のために、富裕で影響力のあるマグルと積極的に交流していました。彼らはマグルの通貨や土地、美術品などを巧みに取り込み、一族の財産を拡大していったのです。

機密保持法の施行後、マルフォイ家は表向きにはマグルとの関係を清算し、熱心な純血主義の支持者としての立場を鮮明にしました。しかし、実際には影響力のあるマグル社会の人物との接触を維持し、その関係を利用して魔法界での地位をさらに固めていたとも言われています。

また、彼らの莫大な富は、ウィルトシャーの邸宅に隠し持っていた闇の魔術に関連する強力な品々や禁書とも無関係ではありません。代々、これらの危険な品物を魔法省の捜査から巧妙に隠蔽し、罰せられることを回避してきた歴史があります。

歴史における影響力|魔法省との結びつき

マルフォイ家は、その富とコネクションを駆使して、何世紀にもわたり魔法省内部に大きな影響力を行使してきました。歴史上のマルフォイ家の中には、魔法省の高官や大臣に巧みに取り入り、時には金銭的な援助や脅迫を通じて、一族に有利な政策決定を促した者もいたとされています。

  • ルシウス・マルフォイ1世(16世紀):エリザベス1世女王に求婚しようとしたという逸話がありますが、女王の拒絶により失敗したと伝えられています(この話の真偽や、マルフォイ家による脚色の可能性も指摘されています)。
  • セプティマス・マルフォイ(18世紀後半):当時の魔法大臣アンクシャス・オズバートに対し、非常に大きな影響力を持っていたとされ、実質的に大臣を陰で操っていたとも言われています。
  • アブラクサス・マルフォイ(20世紀中盤、ドラコの祖父):ヴォルデモート卿が最初に台頭した時期に活動し、当時の魔法大臣ノビー・リーチの早期辞任に関与したのではないかと疑われましたが、決定的な証拠は見つかりませんでした。

これらの歴史は、マルフォイ家が単に純血を誇るだけでなく、政治的な策略にも長けていたことを示しています。

純血思想の変容|ドラコの結婚と次世代への影響

ヴォルデモートの最終的な敗北後、マルフォイ家の純血思想にも変化の兆しが見られました。

ドラコ・マルフォイは、同じく純血の家系出身ではあるものの、比較的マグルに対して寛容な価値観を持つとされるアストリア・グリーングラスと結婚しました。

J.K.ローリングによれば、ドラコとアストリアは息子のスコーピウス・マルフォイに対し、純血至上主義的な偏見を植え付けずに育てようとしました。この変化には、デスイーターとしての過酷な経験や、母ナルシッサが示した家族への愛、そして妻アストリアの影響が大きかったと考えられます。

スコーピウスの物語は、舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』で詳しく描かれています。

マルフォイ家の物語は、純血という概念がいかに脆く、そして個人の経験や人間関係によってその価値観が変わり得るかを示していると言えるでしょう。

3. ウィーズリー家

ウィーズリー家は、歴史ある純血の魔法族の家系です。

しかし、他の多くの純血主義の家とは異なり、マグルやマグル生まれの人々に対して非常に友好的な姿勢を貫いています。そのため、一部の純血主義者からは「血を裏切る者」と蔑まれることもあります。

経済的には恵まれませんが、愛情豊かで温かい家庭を築いているのが大きな特徴です。

主な登場人物

  • アーサー・ウィーズリー:魔法省勤務。マグルに強い関心を持つ。
  • モリー・ウィーズリー(旧姓プルウェット):7人の子供たちの母。プルウェット家も純血の家系。
  • ビル、チャーリー、パーシー、フレッド、ジョージ、ロン、ジニー:全員が魔法使い。ロンとジニーはハリーやハーマイオニーと深く関わる。

4. ゴーント家

ゴーント家は、サラザール・スリザリンの末裔を自称する、非常に古い純血の家系です。

純血の血統を維持することに固執し、何世代にもわたり近親婚を繰り返してきました。その結果、一族には精神的な不安定さや暴力的な傾向が見られ、魔法の才能も衰退していったとされます。極端な純血主義者でありながら、実際には困窮した生活を送っていました。

主な登場人物

  • マールヴォロ・ゴーント:尊大な純血主義者。ヴォルデモートの祖父。
  • モーフィン・ゴーント:マールヴォロの息子。パーセルマウス。
  • メローピー・ゴーント:マールヴォロの娘。虐待され、後にトム・リドル・シニアを惚れ薬で籠絡し、ヴォルデモート(トム・マールヴォロ・リドル)を産む。

5. レストレンジ家

レストレンジ家は、古くからの純血の魔法族の家系です。

一族の多くが闇の魔術に深く傾倒しており、ヴォルデモート卿の最も忠実で狂信的な信奉者(デスイーター)を輩出しました。特にベラトリックス・レストレンジはその筆頭として知られ、その残虐性とヴォルデモートへの献身は際立っています。

主な登場人物

  • ロドルファス・レストレンジ:ベラトリックスの夫。デスイーター。
  • ラバスタン・レストレンジ:ロドルファスの弟。デスイーター。
  • ベラトリックス・レストレンジ(旧姓ブラック):ブラック家出身だが、レストレンジ家に嫁ぐ。

6. ロングボトム家

ロングボトム家は、魔法界で尊敬される純血の家系です。

一族の多くが闇の魔術や純血至上主義に反対する立場を取り、ダンブルドアや不死鳥の騎士団の側について戦いました。

ネビルの両親であるフランクとアリスは、ヴォルデモートに抵抗した勇敢な闇祓いとして知られており、その勇気と犠牲は高く評価されています。

主な登場人物

  • フランク・ロングボトム:ネビルの父。優秀な闇祓いだったが、ベラトリックスらに拷問され精神を破壊される。
  • アリス・ロングボトム:ネビルの母。フランクと共に闇祓いとして活躍し、同様に拷問される。
  • ネビル・ロングボトム:ハリーの友人。最初は気弱だが、グリフィンドールの勇気を示し成長する。
  • オーガスタ・ロングボトム:ネビルの祖母。厳格だが孫の成長を誇りに思う。

純血思想の矛盾と物語における意味

物語を通して、「純血」という概念がいかに脆く、矛盾に満ちたものであるかが描かれています。

  • ヴォルデモートの出自: 純血主義を掲げ、マグル生まれを排除しようとしたヴォルデモート自身が、魔女メローピー・ゴーントとマグルであるトム・リドル・シニアの間に生まれた「半純血(Half-blood)」であることは、最大の皮肉です。
  • 血統の多様性: 魔法族は何世紀にもわたり存在しており、完全にマグルやマグル生まれの血を排除することは事実上不可能です。純血を自称する家系も、系図を遡ればマグルやスクイブ(魔法族に生まれながら魔法が使えない者)の存在が見え隠れします。
  • 個人の選択: シリウス・ブラックやアンドロメダ・トンクスのように、純血の家系に生まれながらもその価値観を拒絶し、異なる道を歩むキャラクターも多く描かれています。逆に、純血のウィーズリー家が「裏切り者」と蔑まれることもあります。

これらの描写から、「ハリーポッター」シリーズは、血統や生まれといった変えられないものではなく、個人の選択、勇気、愛、友情こそが真に重要であるというメッセージを強く打ち出していると言えるでしょう。

まとめ

「ハリーポッター」における「純血の魔法使い」とは、マグルやマグル生まれの血が混じっていないとされる家系の出身者を指しますが、その定義は曖昧で、むしろ社会的な階級意識や差別思想の象徴として描かれています。

マルフォイ家やブラック家のように純血を誇る家系もあれば、ウィーズリー家のようにその価値観に重きを置かない家系も存在します。物語は、血統主義の危険性と、生まれに関わらず個人の選択と行動が未来を形作ることを教えてくれます。

この記事が、「ハリーポッター」の世界における「純血」という概念への理解を深める一助となれば幸いです。

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【参考】
The Malfoy family By J.K. Rowling Originally published on pottermore on Aug 10th 2015
Pure-Blood By J.K. Rowling Originally published on pottermore on Aug 10th 2015

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