「アバダ・ケダブラを受けたはずなのに、なぜハリーは生きていたのか?」
シリーズ最大の疑問とも言えるこの現象は、ご都合主義ではなく、魔法理論・魂・犠牲の力・死の秘宝の構造が密接に絡むテーマです。
この記事では、ハリーの“生還”を支えた3つの要素――分霊箱としての宿命、リリーの血の魔法、そして自己犠牲の力をもとに、わかりやすく解説します。
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【第3回】ヴォルデモートの分霊箱一覧!いつ、どこで、誰が、どう破壊した?時系列まとめ
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Contents
ヴォルデモートは「分霊箱にされた魂の断片」だけを破壊した
1981年、ゴドリックの谷でヴォルデモートが幼いハリーを殺害しようとした際、母リリー・ポッターの自己犠牲による愛の魔法、いわゆる「護りの魔法」がハリーを守り、死の呪文は跳ね返されました。
この時、衝撃でヴォルデモートの魂は分裂し、その一片が意図せずハリーに憑依。ハリーはヴォルデモートの意図しない「分霊箱」となりました。つまり、ハリーの中には、彼自身の魂とは別にヴォルデモートの魂の断片が存在していたのです。
そして、『ハリー・ポッターと死の秘宝』のクライマックス、禁じられた森でヴォルデモートがハリーに再び「アバダ・ケダブラ」を放った際、破壊されたのはハリー自身の魂ではなく、ハリーの中にあった“ヴォルデモートの魂の欠片”でした。
これが、ハリーが生き残った一つ目の理由です。

リリーの「愛の護り」の魔法はヴォルデモートの中にも宿っていた
リリーの「護りの魔法」は、ハリーの血の中に深く刻まれ、彼を守り続けていました。
そして『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』で、ヴォルデモートは復活の儀式にハリーの血を利用します。彼は、ハリーの血を取り込むことでリリーの「護りの魔法」を打ち破れると考えたのかもしれません。しかし、これがヴォルデモートにとって致命的な計算違いとなりました。
ハリーの血と共に、リリーの強力な愛と自己犠牲に基づく魔法もまた、ヴォルデモート自身の体内に取り込まれてしまったのです。つまり、ヴォルデモートはハリーの命を自分自身に繋ぎ止め、リリーの保護を自らの体内に永遠に刻み込むという、最大の過ちを犯しました。

このリリーの保護魔法は、ハリーが生きている限り、その効果は持続しました。そのため、ヴォルデモートの体内に取り込まれた保護魔法もまた、ハリーが生きている間は彼を守り続けることになったのです。
その結果、ヴォルデモートがハリーに対して死の呪文を放っても、彼自身の体内にあるリリーの保護魔法がハリーの完全な死を妨げるという、何とも皮肉な状況が生まれました。
原作者のJ.K.ローリングも、2007年のPottercastインタビューなどで、ヴォルデモートが自身の中にハリーを生かす「命綱」を抱え込んだと語っています。
これが、ハリーが致命的な攻撃を受けてもすぐには死ななかった二つ目の理由です。
ヴォルデモートは、自分自身の中に敵であるハリーを生かし続ける一種の『命綱』を抱え込んでしまった。
それは彼にとって最大の皮肉であり、計算外のことだったのです。
ハリーの「自己犠牲」が、さらなる魔法の保護を生んだ
禁じられた森で、ハリーは抵抗せず自ら死を受け入れました。
この行為は、かつてリリーがハリーを守るために行った「自己犠牲」と全く同じ性質を持つものです。 ダンブルドアが常に語っていた、愛に基づく「古代の魔法」が再び発動し、ハリーが守ろうとしたホグワーツの人々に強力な保護を与えました。
また、この犠牲的な行為は、ハリーが「死の秘宝の真の主人」としての資質を示し、後に彼が「死の淵」から戻る選択をする上での精神的な基盤ともなりました。
「キングズ・クロス駅」の意味
ヴォルデモートの呪文を受けた直後、ハリーはキングズ・クロス駅のような白い空間でダンブルドアと再会します。
なぜキングズ・クロス駅なのか
キングズ・クロス駅のような白い空間で、ダンブルドアはハリーに「戻るか、進むかは君の選択だ」と告げました。
J.K.ローリングは、あの白くて明るい場所をハリーにとっての「現世とあの世の間の場所」や「不安定な中間状態」だと説明しています。
ハリーがそこをキングズ・クロス駅として認識したのは、彼にとってキングズ・クロス駅がホグワーツ(魔法界)とマグルの世界という「二つの世界の間を行き来する玄関口」であり、旅立ちや移行を象徴する場所だったからだろう、と示唆しています。ハリー自身の心が、そのように形作ったということです。
ハリーは自分でキングズ・クロス駅のような場所を創り出したのです。
なぜなら、そこが彼にとって二つの世界の間の通路だからです。そして彼はそこで選択を迫られました。
ーJ.K. Rowling, Online Chat Transcript, Bloomsbury, 30 July 2007.(Accessed via accio-quote、2025/5/15)
ダンブルドアの存在は本物か
キングズ・クロス駅に現れたダンブルドアが本物かハリーの想像かについて、J.K.ローリングは「それは読者の解釈に任せたい」と答えています。
この場面で重要なのは、ハリーがあの状況で導きを必要としていたこと、そして、ハリーにとっての「賢明な導き手」がダンブルドアの姿をとって現れたことです。
あのダンブルドアが何だったのか――ハリーの心が生み出したものなのか、それとも…それは読者が決めることです。でも、私は彼があそこでハリーにとって必要な存在だったと思っています。
ー『J.K. Rowling: A Year in the Life』(2007年)
ベンチの下にいた赤ん坊のような存在は?
あれはヴォルデモートの魂の、ハリーの中にあった部分の最後の痕跡です。
ひどく傷つき、永遠に苦しむことになります。ハリーはそれに対して何もできません。
ーJ.K. Rowling, Online Chat Transcript, Bloomsbury, 30 July 2007.(Accessed via accio-quote、2025/5/15)
まとめ|3つの要素が重なった奇跡
ハリーがヴォルデモートの「アバダ・ケダブラ」を受けても死ななかったのは、決して偶然やご都合主義ではなく、以下の3つの要素が奇跡的に、そして必然的に重なり合って作用した結果でした。
メモ
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リリーの血による保護魔法
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ヴォルデモートによる分霊箱破壊が“ハリー本人”を殺さなかったこと
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ハリー自身の「自己犠牲」と「選択」
これは、ハリー・ポッターシリーズを通じて描かれる「愛の力」「自己犠牲の尊さ」、そして「死と魂の本質」というテーマを象徴していると言えるでしょう。
特集の次回、第5回の記事では、「ダンブルドアはなぜ分霊箱の存在に気づいたのか?」をテーマに深掘りしていきます。
ハリーがホグワーツの6年生になるよりもずっと前に、なぜアルバス・ダンブルドアはヴォルデモートの不死の秘密である分霊箱の存在を疑い、その調査を開始することができたのでしょうか?
ぜひ次回もお楽しみに!
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