最新作『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』の公開で、どんどん拡張されていく魔法の世界。今作で脚本も務めているJ.K.ローリングによる『ハリー・ポッター』シリーズの魅力の一つは、伏線が繋がっていき全てが明らかになった時の衝撃が挙げられるでしょう。最新作の劇中でも、『ハリー・ポッター』で登場した聞き覚えのある名前がたくさん出てきます。今回は、そういったイースターエッグたちを一挙解説!
この記事には映画『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』のネタバレが含まれます。
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魔法省のメール
アバンタイトルの後に登場したイギリスの魔法省。『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』でハリーが魔法省を訪れた際に、飛び回る紙飛行機を不思議そうに見つめていました。それに対し、ウィーズリーおじさんが、
省内連絡メモだよ。昔はふくろうを使っていたんだが、とんでもなく汚れてね……机は糞だらけになるし……
と説明している通り、最新作の中ではふくろうがメモを運んでいます。さらに、ふくろうの糞で汚された窓を屋敷しもべ妖精たちが掃除するカットも出てきました。毎日毎日糞を掃除させることを考えると、連絡メモにシステムを変えたのは賢明と言えるでしょう。
イルヴァーモニー
ニコラス・フラメルが本を通して会話していたユーラリー・ヒックスという人物。誰かというと、アメリカの魔法学校イルヴァーモニーで教師をしている魔女です。初めはダンブルドアに警告しようとしていたフラメルですが、ダンブルドアのページに彼がいなかったため、代わりにヒックスと話しています。また、この本の表紙に不死鳥が描かれていることから、原作ではヴォルデモートに対抗するために1970年代に創設されたという設定の不死鳥の騎士団が、それより前に活動を開始していたのではないか、と噂されています。
ヒックスについて、昨年4月にJ.K.ローリングはTwitterで「ファンタビ2ではヒントが与えられるのみですが、ファンタビ3で彼女の活躍が明らかになります」と述べているため、今後の活躍が期待されます。
トーキル・ トラバース
最新作のホグワーツ城のシーンで、ダンブルドアに手錠を掛けた魔法法執行部の人物。
トラバース家は1930年代の初頭に発売された著者不明『純血一族一覧』で、聖28一族と呼ばれる、間違いなく純血の血筋と認定された28の家系のうちの一つです。グリンデルバルドの時代では現時点でダンブルドア側についていますが、ハリーの時代ではヴォルデモートを支持し、マッキノン一家の殺害に関与してアズカバンに収容された死喰い人が登場しています。脱獄後は『ハリー・ポッターと死の秘宝』の七人のポッターの戦いでキングスリーと戦いを交わしたり、ルーナの家に呼び寄せられてハリーたちを襲っています。
ヴィンダ・ロジエール
ロジエール家もまた、聖28一族に含まれる一家です。『ハリー・ポッター』シリーズではロジエール家の人物が複数出てきます。
ドゥルーエラ:ベラトリックスとナルシッサの母
フェリクッス:ハリー在学時のスリザリン寮の監督生
エバン:イゴール・カルカロフの裁判の際に、司法取引のため挙げられた名前。ムーディによって殺されている。
闇の魔術に対する防衛術
1993年にリーマスがハリーたちに授業をしたのと同じように、ダンブルドアはニュート達にもボガートの対処方法を教えています。映画『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』と同じような構造で描かれたこの場面は、ファンも大喜びのオマージュでした。
ホグワーツ城
懐かしきジョン・ウィリアムズ作曲『ヘドウィグのテーマ』とともにスクリーンに現れたホグワーツ城。ハリー・ポッターとともに育ったファンにとって、このアイコン的な映像はノスタルジアを感じさせたことでしょう。
しかし、これだけでは終わりません。redditという掲示板で現在話題になっているのは、予告編でも出てきたグリンデルバルドとの戦いの後に全員でホグワーツを訪れる場面。あるユーザーが、
このショットで、後ろにジェイコブがいるんだけど、彼だけ周りを見渡しながら困惑しているの。これに気がついたとき、「ワオ!彼がそうなるのは当たり前だ!みんながみんなホグワーツの美しい城を見られるわけではないのだから。」って思った。
と述べています。『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』で、ホグワーツ城の保護呪文についてハーマイオニーがハリーとロンに次のように説明しています。
魔法がかかってるの。マグルが見ると、朽ちかけた廃墟に見えるだけ。入口の看板に、「危険、入るべからず。あぶない」って書いてあるわ
発売中のスクリプトでは言及されていませんが、ハリー・ポッターで描かれた情報に基づいて考えると、頷くことのできるイースターエッグでしょう。
みぞの鏡
最新作で、若かりしダンブルドアがグリンデルバルドの姿を見たみぞの鏡。見る者の強い願望を映し出すこの鏡は、『ハリー・ポッターと賢者の石』で登場し、ハリーに何が見えるか聞かれると、”靴下”を持っている自分が見えると答えています。
第二次世界大戦
『ハリー・ポッターと賢者の石』では、ダンブルドアの蛙チョコにはこう書かれています。
一九四五年、闇の魔法使い、グリンデルバルドを破った
1945年といえば、終戦の年。二人の歴史的な戦いは、現実で起きた第二次世界大戦の比喩であると言われていますが、最新作ではグリンデルバルドのビジョンとしてキノコ雲など、生々しいその光景が映し出されました。
ケルピー
ニュートが自宅の地下で保護していた、馬のような姿の水魔。原作ではすでに何度か名前が登場しています。『ハリー・ポッターと秘密の部屋』では、ギルデロイ・ロックハートがハグリッドに「井戸の中から水魔を追っ払う方法を俺に教えようとしてな」と、迷惑そうにハリーに愚痴っていました。『ハリー・ポッターと謎のプリンス』では、分霊箱を手に入れるために湖を渡る必要があった時、水中にいるのではないかとハリーが心配していた怪物の一つが水魔でした。
「より大きな善のために」
グリンデルバルドとダンブルドアの関係を語るにあたって重要なのが「より大きな善のために」という、世界をより良くするためには多少の犠牲は厭わないという意味のスローガン。小説『ハリー・ポッターと死の秘宝』では、幾度となくこの言葉が出てきました。初登場はリータ・スキーター著『アルバス・ダンブルドアの真っ白な人生と真っ赤な嘘』のうちの一章の題名。”マグルのためにも”魔法使いが権力を行使して支配すべきだと、二人は考えていました。最新作ラストで”城”として出てきた魔法使いの牢獄ヌルメンガードにも、この言葉が掘られています。
死の秘宝
リタがホグワーツの教室でニュートとの思い出に馳せていた場面で、机の裏には「L+N」と描かれていました。しかしそれだけではなく、死の秘宝マークも実は掘られています。
ちなみに、グリンデルバルドもダームストラングの生徒だったときに学校の壁に死の秘宝のマークを彫っていたというエピソードがあります。ビルとフラーの結婚パーティーでは、驚かすため、はたまた自分を偉く見せるため印を本や服にコピーするバカなやつらがいたとクラムが話しています。
マクラーゲン
マクラーゲンと聞いて思い浮かぶのは、『ハリー・ポッターと謎のプリンス』でハーマイオニーを誘惑していたコーマック。最新作では、「ダンブルドアは最高の先生だ」とトーキルに言い放ったマクラーゲンというグリフィンドールの生徒が登場しました。コーマックの先祖なのかどうか、そして下の名前が何かは明かされていません。
愛
『ハリー・ポッター』シリーズでは、全編を通して愛について描かれてきました。それは相手を思う愛のみならず、利己的な愛についてもです。ヴォルデモートはトム・リドル・シニアとメローピー・ゴーントの間に生まれましたが、メローピーは惚れ薬を使ってトムとの結婚に漕ぎ着けています。最新作で描かれたレストレンジ家の複雑な家系図の中でも、リタの父が服従の呪文を用いてロレナ・カーマを妻に迎えていたことが明らかになりました。さらには、クイニーも惚れ呪文をジェイコブにかけています。歪んだ愛のもとで育った結果、トム・リドルはヴォルデモートという闇の帝王になりましたが、一方リタは闇に落ちず、むしろグリンデルバルドに勇敢にも立ち向かいました。果たして、クイニーはどうなるのでしょうか?
フランス魔法省とラブグッド家
フランス魔法省のドーム型の壁には、よく見るとフランス語で「プリンピー」と「エルンペント」と書かれています。プリンピーは斑点と水掻きのついた2本の足を持つ球形の魚で、『ハリー・ポッターと死の秘宝』でゼノフィリウスが「ルーナは川に行っている。川プリンピーを釣りに。」と、ハリーたちに嘘をついていました。エルンペントに関しても、ルーナの家の中にエルンペントの巨大な灰色の角が飾られていました。尤も、ゼノフィリウスは「しわしわ角スノーカックの角だ」と言い張っていましたが。
映画『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』は絶賛公開中、映画『ファンタスティック・ビースト3(仮)』は2020年11月20日に米国公開予定。