インタビュー

ミナリマへの8つの質問―11月22日発売・映画タイアップ本『魔法のアーカイブ』ついて

映画『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』公開に合わせ、映画の世界をそのまま再現したかのようなタイアップ書籍『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生 魔法のアーカイブ』のデザインを手掛けたミナリマ。デザインへのこだわりやJ.K.ローリングが創り出す魔法の世界への思いなど、ハーパーコリンズによるインタビューを紹介します。

1.お二人は『ハリー・ポッター』の映画第1作目『ハリー・ポッターと賢者の石』で初めて仕事をし、それがきっかけとなってMINALIMAというスタジオを後に立ち上げたと聞いています。個別に仕事をするのではなく、なぜ一緒に事務所を立ち上げようと思ったのでしょうか?

リマ:『ハリー・ポッター』の9作全てで仕事をした後で、これで終わりなんて信じられない、魔法を作り続けていかなくてはいけない、そう思ったので一緒にやり続けることにしました。

ミナ:何かクリエイティブなことをする時に、二人でやったほうが、個別にやるよりも素晴らしいものができることを学んだからです。これはほかの事務所でも同じような体制があるように見受けられます。

リマ:ハーパーコリンズのせいでもあるんですよ。なぜかと言うと、2009年にハーパーコリンズから『ハリー・ポッター』の映画の関連本を出してほしいという依頼があったのですが、その時からどんどんハーパーコリンズとのつながりが強くなっていったんです。だから、もう一緒にやらざるを得なくなりました(笑)。

2.意見が衝突することはありませんか?

リマ:最初はやっぱり衝突することもありました。お互いの志向が違ったので。ただ、デザイン特有のタイポグラフィとか、美しいデザインに対する愛や熱意というものは、二人とも持っていました。今はそれぞれの異なる持ち味が融合するようになってきましたが、始めの頃は、どちらかと言うとリマのほうがせわしなくてカラフルなものが好きで、ミナはエレガントで上品でミニマルなデザインが好きでした。ミナはスペースがあるもののほうが好きだったんです。そういった違いはありましたが、今はうまい具合に混ざり合っていると思います。

3.映画のグラフィックデザイナーが書籍デザインまで手がけることは、日本ではあまり聞いたことがありません。なぜ、書籍のデザインも行うことにしたのでしょうか?

リマ:『ハリー・ポッター』のウィザーディング・ワールドに関わる人というのは、本当に一つの大きな家族のようになります。家族の一員になったからこそ、全てをデザインしたくなりました。最初に本に関わり始めたのが『Harry Potter Film Wizardry』で、ハーパーコリンズのニューヨークで担当をしているマータ・スクーラーという編集者が話を持ってきてくれました。なので、全て彼女のせいと言えます(笑)。私たちが本のデザインをするのがなぜ良いかと言うと、私たちは映画の撮影の状況をしっかりと見ていたからです。その上で本をデザインすることによって、ほかの本よりは特別なものを作れると自負しています。外部の人では入手できないような素材や情報を持っているので、そこがとても特別なのではないかと思います。

ミナ:撮影中、全てのことを見てきているので、自分自身が体験したことではないですが、デザインの観点から映画の物語そのものを伝えられるというわけです。

リマ:今まですでに9点、ハーパーコリンズから本を出していますが、売り上げは伸びる一方です。これをぜひ書いてくださいね(笑)。

ミナ:最初は商業目的で本をデザインすることに対して、少しナイーブでした。映画の中に出てくる本をデザインして、小道具として使ってもらっていましたが、現実世界で本を制作するというのは、ちょっと違うと感じていたからです。

4.MINALIMAさんが今回の書籍をデザインする中で、一番こだわり、力を入れた点はどこですか? また、お二人のお気に入りのページやおすすめのページがあれば教えてください。

リマ:これは映画においても言えることですが、主人公の使っていた小物だからとか、背景で使われた衣裳だからとかで、私たちはものやデザインを区別しません。全てのものに同じだけの熱意を注ぎ、細かくデザインすることを心掛けています。ですので、全てのデザインにさまざまな情報が詰め込まれていて、むしろ映画よりも本のほうが、映画の色々な要素をご理解いただけると思います。本の中を見ていただければ、全てのページが念入りにデザインされ尽くしていることにお気づきになるでしょう。

ミナ:とは言っても、表紙というのは読者にとって、とても大切なものだと思います。なので、そこには本当に多くの時間をかけて、没頭して考えました。その結果、映画において重要な役割を持つものを表紙に持ってくるようになりました。例えば、1作目『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅 魔法映画の旅』では、主人公ニュートが持つスーツケースをモチーフにしました。今回の本もたまたま『魔法のアーカイブ』という名前にしたわけではなく、「アーカイブ」が映画の中で重要な要素であるから名付けましたし、そのようなデザインにしたわけです。表紙のデザインと本のタイトルというのは、非常に大切なものだと考えています。

リマ:映画でも本でもそうですが、ウィザーディング・ワールドのワクワクするような仕掛けは、作品ごとに新しく作られています。その意味では今回もまた例外ではなく、新しくフランスの魔法省と、サーカスが登場します。特に、映画では、サーカスのポスターをたくさん作りました。そういったものも数多く本でご紹介していますので、注目してみてください。1作目の『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』が好きだった方は、今回は10倍楽しんでもらえると思います。というのは、その世界により深く入っていき、さらにドラマが展開されていくからです。1作目は、どちらかと言うと導入の物語でしたのでね。今回は、ホグワーツとも深い関係を持ち始めるので、ファンの皆さんにはたまらないでしょう。

5.今回の本(『ファンタスティック・ビートと黒い魔法使の誕生 魔法のアーカイブ』)にも前回同様、映画で使われた小道具のレプリカが付いてくると聞いています。何が入っているか教えてもらえますか? ウィザーディング・ワールドファンはどのように楽しめるでしょうか?

リマ:今回は、特に重要なものが3つ入っています。1つ目は、先ほどお話ししたサーカスのポスターです。これは全く新しい世界のものなので、ぜひ見てください。2つ目は、クリーデンスのアダプションペーパー(養子縁組証明書)。これも映画で大切な役割を持っているものです。3つ目は、ダンブルドアが、ニュートがフランスに行く時にあげるカードです。そこには、「もしフランスで困ったことがあったら、この人を訪ねなさい」と書かれています。その人物とは、『ハリー・ポッターと賢者の石』で名前だけ登場していたニコラス・フラメルのことで、物語がこのカードからどんどんつながっていきます。この他に、ニュートの魔法省でのIDカードなどもありますよ。

6.前作の『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅 魔法映画の旅』でも書籍のデザインを手掛けられましたが、今回2作目ということで、1作目を作成する時と変わった点と、変わらない点を教えてください。

リマ:1作目との比較はしたくないと思っています。どちらの本もとても面白いですし、重層的に細部までデザインされています。この後の3作も、そのまま続けていきたいと思っています。私たちは、できるだけ多くの情報を本に載せたいのです。本当にこの作品が大好きなので、ファンにもこの想いを届けていきたいですね。

7.『ファンタスティック・ビースト』の映画シリーズのデザインを手掛けていらっしゃいますが、原作を基にしつつ、MINALIMAさんならではのデザインの発想は、どのように浮かんでくるのでしょうか?

リマ:映画に出てくる本そのものとしての『ファンタスティック・ビースト』は、魔法動物たちのリストなので、そこから物語のデザインを作り出していくというのは本当に大変で、いろいろな情報が必要でした。魔法動物の情報も必要でしたし、動物世界(生息地)や動物施設、魔法省、スーツケースそのもの、魔法動物たちの外見デザインなどもとても重要でした。

ミナ:映画のグラフィックデザインをするにあたっては、インスピレーションのためにたくさんのリサーチが必要です。例えば魔法省を作る場合、実際の世界ではそういった大きな組織の建物というのはどんなものなのか、どういったスタイルなのか、それを魔法の世界に当てはめるとどうなるのかを考える必要があります。まずは美術監督を担当しているスチュアート・クレイグが、セット全体をデザインするので私たちはそれを待ってからデザインを作ります。今回の『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』に関して言うと、セットデザインにアール・ヌーヴォーの様式がたくさん使われていたので、それを見た後に自分たちの担当しているグラフィックデザインにも応用しました。

8.世界中の『ハリー・ポッター』、『ファンタスティック・ビースト』の映画シリーズのファンは、MINALIMAさんのデザインしたものが大好きです。日本にもファンがたくさんいますので、お二人からファンにメッセージをお願いします。

ミナ:まずは、ありがとうございますとお伝えしたいです。日本に、こんなにも素晴らしい観客や読者の方々がいると知らなかったので、驚きです。全ての映画において言えることですが、作品というのは一方向的なものではなくて、ファンがいてこそ価値ある映画になると思うので、そんな素敵な日本のファンの方々とつながることができて本当に光栄です。こんなに英国っぽい物語が、地球の反対側でここまで人気になるということも喜ばしいですね。言語が違っても、力強い物語やビジュアルといったものがあることによって、ここまで大きくなるんだということを嬉しく思っていますし、みなさんのサポートに感謝しています。

リマ:私たちは、全てファンのために仕事をしているので、今後も私たちのデザインをどんどん楽しんでいただきたいと思います。今回、日本に来たのは初めてでしたが、これが最後になるとは思えません。多分また来ると思います。本当にこんなに温かく迎えていただいて、とても感激しています。『ハリー・ポッター』、『ファンタスティック・ビースト』、そしてウィザーディング・ワールドの素晴らしい点は、人々をつなげる力があることだと思います。今回、私たちは仕事で来日しましたが、こんなにもファンの人たちとつながることができるとは思っていなかったので、その点においても、この家族の一員になれて、本当に嬉しく思っています。

■書籍情報
『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生 魔法のアーカイブ』
シグニー・バーグストローム(著)/ ISBN978-4-596-77708-9/定価:4,000円+税
2018年11月22日(木)発売

J.K.ローリングが生み出した魔法世界の舞台裏に密着した、映画をより楽しむためのビジュアルブック。映画に隠された秘密、撮影風景、スタッフやキャストが語る逸話と、本編に登場する小道具などの精巧なレプリカが満載。
ワーナー・ブラザース コンシューマープロダクツ公認、前作や映画『ハリー・ポッター』シリーズでもグラフィックや小道具を担当したデザインチーム、MinaLimaのトップクリエイターたちが手がけた本書は、魔法世界を愛する全世代のファンへ贈る必携本。

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