『ファンタスティック・ビースト』シリーズの登場で、一躍注目を集めたMACUSA(マクーザ)。ハリー・ポッターの世界でお馴染みの「魔法省」とは、何が違うのでしょうか?
この記事では、MACUSAの基本情報から、その設立背景、物語の鍵を握る「ラパポート法」、そして『ファンタスティック・ビースト』の登場人物との関係まで、網羅的に解説します。
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MACUSAとは?アメリカの魔法界を統治する最高機関
イギリスの「魔法省(Ministry of Magic)」に相当する機関が、アメリカ合衆国魔法議会、通称MACUSA(マクーザ)です。正式名称を「Magical Congress of the United States of America」といい、日本語では「アメリカ合衆国魔法議会」と訳されます。
その主な役割は、アメリカ国内の魔法社会における秩序を維持し、魔法使いの存在を非魔法族(アメリカでは「ノー・マジ」と呼ばれる)から隠し通すことにあります。本部はニューヨークのウールワース・ビルに置かれており、徹底した秘匿体制が敷かれています。
しかし、その歴史と仕組みはイギリスの魔法省以上に波乱に満ちたものでした。ファンなら知っておきたい、MACUSAの深層を紐解いていきましょう。
魔法露見脅威レベルメーター
MACUSAのロビーに足を踏み入れた者がまず目を奪われるのが、壁面に掲げられた巨大な時計型のデバイス「魔法露見脅威レベルメーター」です。これは時刻を示すものではなく、北米における魔法界の安全性をリアルタイムで監視する重要な計器です。
針が指し示す5段階の色には、それぞれ以下の意味が込められています。
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緑(Level 1:低脅威):平和な状態。ノー・マジとの間には特に問題が発生しておらず、国際機密保持法が完璧に守られている状態です。
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青(Level 2:注視):軽微な魔法使用の報告や、ノー・マジの不審な動きが確認された場合。
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黄色(Level 3:警戒):魔法の露呈リスクが高まっている状態。魔法使いがノー・マジに目撃された可能性があり、忘却術部隊の出動準備が整えられる段階です。
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オレンジ(Level 4:深刻):大規模な魔法の露呈、あるいは歴史的な「魔女狩り」の再来が懸念される場合。
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赤(Level 5:緊急事態):広範囲での忘却術が必要な、魔法界の崩壊を意味する最悪のレベル。1926年のニューヨークで、ニュートの魔法動物が逃げ出し、さらには闇の魔法使いゲラート・グリンデルバルドの影響が強まる中、針は容赦なくこの領域へと跳ね上がりました。
この計器のデザインは、1920年代のアール・デコ様式を反映しており、アメリカの魔法社会がどれほど高度に組織化され、かつ脅迫的なまでの警戒心を持って運営されていたかを物語っています。イギリスの魔法省が「伝統と官僚主義」の象徴であるならば、MACUSAのこのレベルメーターは「監視と隠蔽」の象徴なのです。
設立の歴史と悲劇が生んだ「ラパポート法」
MACUSAの歴史は、ノー・マジとの厳しい断絶の歴史でもあります。その象徴が「ラパポート法」です。
法律制定の引き金となった「ドーカス事件」
1790年、MACUSAは魔法族とノー・マジの完全な分離を目的とした「ラパポート法」を制定しました 。この法律が生まれるきっかけは、MACUSA内部から発生した、前代未聞の機密漏洩事件でした 。
事件の中心人物は、当時のMACUSA高官の娘、ドーカス・トゥエルブツリーズ 。彼女はハンサムなノー・マジのバーソロミュー・ベアボーンに恋をしますが、彼が魔法使いを憎む「スカウラー」の子孫であることを見抜けませんでした 。
ドーカスは恋心から、バーソロミューの巧みな質問に乗り、MACUSAやイルヴァーモーニー魔法魔術学校の秘密の所在地といった最高機密を漏らしてしまいます 。情報を得たバーソロミューは、彼女からだまし取った杖をマスコミに公開し、魔法使いの住所が書かれたビラを配布するなど、魔法社会を破滅させようと画策しました 。
この事件によりMACUSAは甚大な被害を受け、建物の移転を余儀なくされるほどでした 。この悲劇的な経験から、ノー・マジとの間に決して越えられない壁を築く法律が制定されたのです。
ラパポート法の厳格な内容
ラパポート法は、アメリカ魔法社会に極めて厳格なルールを課しました。
- ノー・マジとの友好・結婚の禁止
- ノー・マジとのコミュニケーションの制限(日常生活に必要な最低限のみ)
この法律は、魔法族とノー・マジの間に協力関係が存在したヨーロッパの魔法界とは対照的に、アメリカの魔法族をより深く地下社会へと追いやる結果となりました 。
伝説の12人の「初代闇祓い」
1693年のMACUSA設立時、アメリカ魔法界は「スカウラー(魔法界の賞金稼ぎ)」や魔法犯罪者が蔓延る無法地帯と化していました。この危機に立ち向かうべく、初代議長ジョシア・ジャクソンが募ったのが、初代闇祓いである「最初の12人(The First Twelve)」と呼ばれる志願兵たちです。彼らはアメリカにおける闇祓い)の先駆者であり、その名は今日まで魔法史に刻まれています。
特に注目すべきは、その一人であるエイブラハム・ポッターです。
ハリー・ポッターと繋がる「エイブラハム・ポッター」
エイブラハム・ポッターは、18世紀後半にアメリカの系譜学者たちによって、のちのハリー・ポッターと遠い親戚関係にあることが特定されました。ハリーの家系であるポッター家は、もともとイギリスで魔法使いの法執行に関わってきた一族ですが、エイブラハムは新天地アメリカへ渡り、その正義の血筋を証明しました。
彼は、MACUSA設立当初の極めて危険な任務――逃亡した魔法犯罪者の追跡やスカウラーの摘発――を遂行し、アメリカ魔法界の基盤を文字通り命懸けで築いた人物です。彼がいたからこそ、今日のアメリカにおける魔法秩序が存在すると言っても過言ではありません。
名門グレイブス家のルーツ「ゴンドルファス・グレイブス」
もう一人の重要人物が、ゴンドルファス・グレイブスです。
彼は、映画『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』に登場する魔法法執行部部長、パーシバル・グレイブスの先祖にあたります。ゴンドルファスは、アメリカ魔法界において非常に影響力のある政治的家系「グレイブス家」の祖であり、彼の功績によってグレイブス家はアメリカ魔法界のエリートとしての地位を確立しました。
サスカッチ大反乱も? 5回にわたる遷都の歴史
現在のMACUSAはニューヨークに居を構えていますが、1693年の設立以来、本部を5回も移転させています。その理由は、アメリカ大陸ならではの特殊な事情にありました。
1. アパラチア山脈|隠れ家としての最初の拠点
設立当初の拠点は、人里離れたアパラチア山脈の奥地にありました。セーレムの裁判直後で極度の警戒状態にあったため、魔法使いたちは自給自足の生活を送りながら、組織の基礎を築きました。
2. ウィリアムズバーグ(1760年)|都市部への進出
魔法界の人口増加に伴い、1760年にはバージニア州ウィリアムズバーグへ。この時期はまだノー・マジとの共存を模索していた時代でもあり、都市に近い場所が選ばれました。
3. ボルチモア(1777年)|独立戦争の影で
アメリカ独立戦争の勃発を受け、議会はメリーランド州ボルチモアへ移転します。ノー・マジの戦争に巻き込まれることを避けるため、より秘密保持が容易な場所へと逃れたのです。
4. ワシントンD.C.(1892年)|サスカッチ大反乱による壊滅
1892年、議会は首都ワシントンに置かれましたが、ここで前代未聞の事件が起きます。伝説のUMA(未確認動物)であるサスカッチ(ビッグフット)による大規模な反乱が発生。庁舎は壊滅的な被害を受け、魔法界の秘密が漏洩しかけるという、アメリカ魔法史最大の危機を迎えました。
5. ニューヨーク|摩天楼の中への隠れ家
サスクワッチの襲撃から逃れるようにして、1892年末に現在のウールワース・ビルへ移転。建築中のビルに魔法をかけ、地下から高層階までを魔法使いの活動拠点へと変貌させました。
『ファンタスティック・ビースト』とMACUSA
『ファンタスティック・ビースト』シリーズでは、このラパポート法下のMACUSAが物語の重要な舞台となります。
ノー・マジのジェイコブ・コワルスキーと恋に落ちた魔法使いクイニー・ゴールドスタインの関係は、まさにこの法律によって引き裂かれそうになります 。結婚を禁じられたクイニーの絶望は深く、彼女が一時期グリンデルバルドの思想に傾倒する大きな原因となりました 。二人の恋の行方は、このアメリカ魔法界の厳しい現実を色濃く反映しているのです。
MACUSAに所属する主なキャラクター
MACUSAの歴史と物語は、組織に所属する数々のキャラクターによって彩られています。
特に『ファンタスティック・ビースト』の時代である1920年代の議長や職員、そしてMACUSAの歴史を形作った過去の重要人物は、物語を理解する上で欠かせない存在です。
クイニー・ゴールドスタイン (Queenie Goldstein)
『ファンタスティック・ビースト』シリーズに登場する魔女で、かつてMACUSAで働いていました。彼女は、非魔法族(ノー・マジ)であるジェイコブ・コワルスキーと深く愛し合いますが、当時MACUSAが施行していた「ラパポート法」により、ノー・マジとの結婚や交友は固く禁じられていました。
結婚できないことへの絶望から、クイニーはジェイコブに魔法をかけ、彼の知らないうちに結婚しようとロンドンへ連れて行くという大胆な行動に出ます。彼女の物語は、MACUSAの厳格な法律が個人の人生に与えた影響を象徴しています。幸いにも、様々な困難を乗り越えた末に、二人は純粋な愛のもとで結婚することができました。
セラフィーナ・ピッカリー (Seraphina Picquery)

1920年代を通してMACUSAの議長を務めた、サバンナ出身の才能あふれる著名な魔女です。彼女のリーダーシップのもと、MACUSAは第一次世界大戦後のアメリカ魔法界を統治しました。
- 所有する杖: ニューオーリンズの有名な杖職人ヴィオレッタ・ボーヴェが作った杖を所有していました 。ボーヴェの杖の芯には、ルイジアナの沼地を徘徊する危険な怪物「ルーガルー」の毛が使われており 、闇の魔術に惹かれる性質があると言われながらも、多くの英雄に愛用されていました 。
- 有名な逸話: ノー・マジ社会で禁酒法が施行されていた1920年代、MACUSAは魔法族の飲酒を許可し続けました 。この方針についてピッカリー議長は、ある時、首席補佐官に「ギグルウォーター(笑い水)は、交渉の余地なし」と語ったことで知られています 。
エミリー・ラパポート (Emily Rappaport)
1790年当時のMACUSAの第15代議長です。
彼女の名を冠した「ラパポート法」は、MACUSA内部から発生した重大な機密漏洩事件を受けて作られたもので、魔法族とノー・マジのコミュニティを完全に分離させるために制定されました。
この法律は、第一次世界大戦に魔法族が協力した後でさえ緩和されることはなく、1920年代のアメリカ魔法界でも固く維持されていました。その結果、アメリカの魔法使いはヨーロッパの魔法使いよりもはるかに厳格な秘密主義の中で生活することに慣れていきました 。
アリストートル・トゥエルブツリーズ (Aristotle Twelvetrees)
ラパポート議長の時代に、「宝物・ドラゴット管理局長」を務めていた有能な魔法使いです。
しかし、彼の娘であるドーカス・トゥエルブツリーズが重大な機密漏洩事件を起こしたことで、アメリカ魔法界は未曾有の危機に瀕しました。この事件は後世に大きな影響を残し、魔法界の言葉で「ドーカスになる(being 'a Dorcus')」と言うと、「馬鹿者」や「間抜けな人」を意味するスラングとして定着するほどでした 。
まとめ|歴史を知れば『ファンタビ』はもっと面白い
MACUSAは単なる政府組織ではなく、アメリカ大陸の荒々しい歴史と戦ってきた英雄たちの結晶です。サスカッチの反乱による遷都や、ハリーの祖先が名を連ねる「最初の12人」など、その設定の深さはマニアの探究心をくすぐり続けています。
ニュート・スキャマンダーがニューヨークの土を踏んだ時、MACUSAはすでに200年以上の苦難を乗り越えてきた強固な組織でした。次にシリーズを鑑賞する際は、議会ロビーに掲げられた巨大な時計が、単なる装飾ではなく「アメリカ魔法界の生存を懸けた警告灯」であることを思い出してみてください。きっと、物語の緊迫感がより一層増すはずです。
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【参考】
The Magical Congress of the United States of America (MACUSA) By J.K. Rowling Originally published on pottermore logo on Oct 6th 2016
Rappaport’s Law By J.K. Rowling Originally published on pottermore logo on Mar 10th 2016
A closer look at a magical device featured in Fantastic Beasts Published on Jun 30th 2016
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