『ファンタスティック・ビースト』シリーズの登場で、一躍注目を集めたMACUSA(マクーザ)。ハリー・ポッターの世界でお馴染みの「魔法省」とは、何が違うのでしょうか?
この記事では、MACUSAの基本情報から、その設立背景、物語の鍵を握る「ラパポート法」、そして『ファンタスティック・ビースト』の登場人物との関係まで、網羅的に解説します。
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MACUSAとは?アメリカの魔法界を統治する最高機関
MACUSAとは「Magical Congress of the United States of America」の略称で、日本語では「アメリカ合衆国魔法議会」と訳されます 。イギリスの「魔法省」に相当する、アメリカ魔法界の政府機関です。
その主な役割は、アメリカ国内の魔法社会の秩序を維持し、魔法使いの存在を非魔法族(アメリカでは「ノー・マジ」と呼ばれる)から隠すことです。本部はニューヨークのウールワース・ビルにあります。
設立の歴史と悲劇が生んだ「ラパポート法」
MACUSAの歴史は、ノー・マジとの厳しい断絶の歴史でもあります。その象徴が「ラパポート法」です。
法律制定の引き金となった「ドーカス事件」
1790年、MACUSAは魔法族とノー・マジの完全な分離を目的とした「ラパポート法」を制定しました 。この法律が生まれるきっかけは、MACUSA内部から発生した、前代未聞の機密漏洩事件でした 。
事件の中心人物は、当時のMACUSA高官の娘、ドーカス・トゥエルブツリーズ 。彼女はハンサムなノー・マジのバーソロミュー・ベアボーンに恋をしますが、彼が魔法使いを憎む「スカウラー」の子孫であることを見抜けませんでした 。
ドーカスは恋心から、バーソロミューの巧みな質問に乗り、MACUSAやイルヴァーモーニー魔法魔術学校の秘密の所在地といった最高機密を漏らしてしまいます 。情報を得たバーソロミューは、彼女からだまし取った杖をマスコミに公開し、魔法使いの住所が書かれたビラを配布するなど、魔法社会を破滅させようと画策しました 。
この事件によりMACUSAは甚大な被害を受け、建物の移転を余儀なくされるほどでした 。この悲劇的な経験から、ノー・マジとの間に決して越えられない壁を築く法律が制定されたのです。
ラパポート法の厳格な内容
ラパポート法は、アメリカ魔法社会に極めて厳格なルールを課しました。
- ノー・マジとの友好・結婚の禁止
- ノー・マジとのコミュニケーションの制限(日常生活に必要な最低限のみ)
この法律は、魔法族とノー・マジの間に協力関係が存在したヨーロッパの魔法界とは対照的に、アメリカの魔法族をより深く地下社会へと追いやる結果となりました 。
『ファンタスティック・ビースト』とMACUSA
『ファンタスティック・ビースト』シリーズでは、このラパポート法下のMACUSAが物語の重要な舞台となります。
ノー・マジのジェイコブ・コワルスキーと恋に落ちた魔法使いクイニー・ゴールドスタインの関係は、まさにこの法律によって引き裂かれそうになります 。結婚を禁じられたクイニーの絶望は深く、彼女が一時期グリンデルバルドの思想に傾倒する大きな原因となりました 。二人の恋の行方は、このアメリカ魔法界の厳しい現実を色濃く反映しているのです。
MACUSAに所属する主なキャラクター
MACUSAの歴史と物語は、組織に所属する数々のキャラクターによって彩られています。
特に『ファンタスティック・ビースト』の時代である1920年代の議長や職員、そしてMACUSAの歴史を形作った過去の重要人物は、物語を理解する上で欠かせない存在です。
クイニー・ゴールドスタイン (Queenie Goldstein)
『ファンタスティック・ビースト』シリーズに登場する魔女で、かつてMACUSAで働いていました。彼女は、非魔法族(ノー・マジ)であるジェイコブ・コワルスキーと深く愛し合いますが、当時MACUSAが施行していた「ラパポート法」により、ノー・マジとの結婚や交友は固く禁じられていました。
結婚できないことへの絶望から、クイニーはジェイコブに魔法をかけ、彼の知らないうちに結婚しようとロンドンへ連れて行くという大胆な行動に出ます。彼女の物語は、MACUSAの厳格な法律が個人の人生に与えた影響を象徴しています。幸いにも、様々な困難を乗り越えた末に、二人は純粋な愛のもとで結婚することができました。
セラフィーナ・ピッカリー (Seraphina Picquery)
1920年代を通してMACUSAの議長を務めた、サバンナ出身の才能あふれる著名な魔女です。彼女のリーダーシップのもと、MACUSAは第一次世界大戦後のアメリカ魔法界を統治しました。
- 所有する杖: ニューオーリンズの有名な杖職人ヴィオレッタ・ボーヴェが作った杖を所有していました 。ボーヴェの杖の芯には、ルイジアナの沼地を徘徊する危険な怪物「ルーガルー」の毛が使われており 、闇の魔術に惹かれる性質があると言われながらも、多くの英雄に愛用されていました 。
- 有名な逸話: ノー・マジ社会で禁酒法が施行されていた1920年代、MACUSAは魔法族の飲酒を許可し続けました 。この方針についてピッカリー議長は、ある時、首席補佐官に「ギグルウォーター(笑い水)は、交渉の余地なし」と語ったことで知られています 。
エミリー・ラパポート (Emily Rappaport)
1790年当時のMACUSAの第15代議長です。
彼女の名を冠した「ラパポート法」は、MACUSA内部から発生した重大な機密漏洩事件を受けて作られたもので、魔法族とノー・マジのコミュニティを完全に分離させるために制定されました。
この法律は、第一次世界大戦に魔法族が協力した後でさえ緩和されることはなく、1920年代のアメリカ魔法界でも固く維持されていました。その結果、アメリカの魔法使いはヨーロッパの魔法使いよりもはるかに厳格な秘密主義の中で生活することに慣れていきました 。
アリストテレス・トゥエルブツリーズ (Aristotle Twelvetrees)
ラパポート議長の時代に、「宝物・ドラゴット管理局長」を務めていた有能な魔法使いです。
しかし、彼の娘であるドーカス・トゥエルブツリーズが重大な機密漏洩事件を起こしたことで、アメリカ魔法界は未曾有の危機に瀕しました。この事件は後世に大きな影響を残し、魔法界の言葉で「ドーカスになる(being 'a Dorcus')」と言うと、「馬鹿者」や「間抜けな人」を意味するスラングとして定着するほどでした 。
まとめ
MACUSAは、単なるアメリカ版の魔法省ではありません。その歴史には、ノー・マジとの間に起こった悲劇的な事件と、それによって生まれた深い断絶の歴史が刻まれています。「ラパポート法」という厳格な法律は、アメリカ魔法社会の文化を形成し、『ファンタスティック・ビースト』の物語に深みを与えています。
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【参考】
The Magical Congress of the United States of America (MACUSA) By J.K. Rowling Originally published on pottermore logo on Oct 6th 2016
Rappaport’s Law By J.K. Rowling Originally published on pottermore logo on Mar 10th 2016
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