ハリー・ポッターと呪いの子

「ハリー・ポッターと呪いの子」は、J.K.ローリングが手がけた原作完結から19年後の世界を描いた舞台作品です。

「映画はあるの?」「予習は必要?」「どんな話?」という疑問に、初心者でもわかりやすくお答えします。

本記事では、これから観る人がストーリーを何倍も楽しめるように、あらすじキャラクター予習ポイントをご紹介します。

舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』とは?

この舞台は、単なるスピンオフや二次創作ではありません。ハリー・ポッターの物語における、極めて重要な位置づけを持つ作品です。

ハリー・ポッターシリーズの「8番目の物語」

まず最も重要な点は、本作が原作者J.K.ローリング自身が原案を手がけた、「ハリー・ポッター」シリーズの8番目の物語であり、公式の続編であるということです。

シリーズ7作品目『ハリー・ポッターと死の秘宝』で完結したと思われていたハリーの人生の、その先が描かれています。これは、世界中のファンが待ち望んだ、正真正銘の新しい物語なのです。

小説ではない、演劇のために生まれた物語

書店で手に入る『呪いの子』は、これまでのシリーズ作品のような「小説」ではなく、演劇上演のために書かれた「脚本」です。

J.K.ローリングが作り上げた原案を基に、脚本家のジャック・ソーンが台本を執筆し、演出家のジョン・ティファニーが舞台化するという、演劇界のトップクリエイターたちが集結して生み出されました。

そのため、物語は登場人物の台詞と、動きや情景を示す「ト書き」によって進行します。

世界が絶賛した、受賞歴多数の傑作舞台

2016年にロンドンのウエストエンドで開幕して以来、『呪いの子』は世界中の観客と批評家から圧倒的な支持を受けています。

演劇界で最も権威ある賞とされる英国のローレンス・オリヴィエ賞で史上最多の9部門を、そして米国ブロードウェイのトニー賞では作品賞を含む6部門を受賞。

これらの輝かしい受賞歴は、本作が単なる人気シリーズの続編というだけでなく、演劇作品として極めて高い芸術性を備えていることの証明です。

物語のあらすじ【ネタバレなし】

©TBS/ホリプロ

物語の幕が開くのは、小説・映画『ハリー・ポッターと死の秘宝』のラストシーン、あの感動的な「19年後」の場面と全く同じです。

キングス・クロス駅の9と4分の3番線。ホグワーツ魔法魔術学校へ向かう特急列車に、二人の少年が乗り込もうとしています。

一人は、ハリー・ポッターとジニー・ウィーズリーの次男、アルバス・セブルス・ポッター。 そしてもう一人は、ドラコ・マルフォイの一人息子、スコーピウス・マルフォイ

「生き残った男の子」として世界を救った伝説の英雄を父に持つアルバスは、その偉大すぎる父と比較されることに苦悩しています。一方のスコーピウスもまた、元デスイーターである父を持つこと、そして自らの出自に関する悪意に満ちた噂によって、孤独を抱えていました。

ホグワーツへと向かう列車の中で偶然出会った二人は、周囲の予想に反し、すぐに固い友情で結ばれます。しかし、父との関係がうまくいかないアルバスは、過去のある出来事に対するハリーの後悔を知り、親友スコーピウスと共に、禁じられた魔法アイテム「タイムターナー(逆転時計)」を使って過去を変えようと決意します。

その無謀な試みは、やがて魔法界全体を脅かす、取り返しのつかない事態を引き起こすことに…。

本作は、新世代の子どもたちの冒険と成長を描くと同時に、英雄として、そして父親として、新たな悩みに直面するハリー・ポッターの姿を描く、壮大かつ普遍的な親子の愛の物語でもあります。

原作とのつながりは?続編?

『ハリー・ポッターと呪いの子』は、J.K.ローリング公認の“公式続編”と位置づけられています。

ただし、ローリング自身が脚本を書いたわけではなく、共同制作に携わった形です。そのため、「原作とは少しトーンが違う」「キャラが違って見える」という意見もあり、原作ファンの中には賛否両論が存在します。

映画化はされるの?

『ハリー・ポッターと呪いの子』は、現時点(2025年)では映画化されていません

ただし、映画化の噂は何度もあり、ワーナー・ブラザースが映像展開を検討しているという報道も過去にありました。

今のところは、舞台での上演戯曲本でしか物語を楽しむことはできません。

主な登場人物

ハリー・ポッター

ハリー・ポッターは、「ハリー・ポッター」シリーズの主人公。かつてヴォルデモー卿(ヴォルデモート)を打ち破り、魔法界を救った「生き残った男の子」も、今や魔法省の魔法法執行部長として多忙な日々を送る、三人の子を持つ父親です。

英雄としての輝かしい過去とは裏腹に、家庭では思春期の次男アルバスとの関係に深く悩み、どう接すれば良いのか分からない不器用な父親として描かれます。

過去の戦いで負った心の傷やトラウマは未だ癒えず、悪夢にうなされる日々を送っており、その不安がアルバスへの過剰な心配や、すれ違いの原因ともなっています。伝説の英雄である彼ですが、父親としては未熟で、自分の価値観を息子に押し付けてしまうことも少なくありません。

この物語におけるハリーの旅は、再び魔法界の危機に立ち向かうことだけでなく、一人の父親として息子と真に向き合い、自身の弱さや過去の過ちを乗り越えていく、内面的な成長の物語でもあります。宿敵であったドラコ・マルフォイと同じ父親としての悩みを共有し、新たな関係を築いていく姿も見どころの一つです。

アルバス・セブルス・ポッター

©TBS/ホリプロ

アルバス・セブルス・ポッターは、ハリーとジニーの間に生まれた次男で、魔法界の誰もが知るポッター家の血を引いています。

しかし、彼は「生き残った男の子」の息子という、あまりにも大きな期待とプレッシャーに幼い頃から悩まされてきました。

陽気で人気者の兄ジェームズとは対照的に、内向的で繊細な性格のアルバスは、偉大な父親と比較されることに常に苦悩し、深いコンプレックスを抱いています。

©TBS/ホリプロ

その葛藤は、ホグワーツ魔法魔術学校に入学後、ポッター家としては異例の「スリザリン寮」に組分けされたことで決定的となります。周囲からの好奇の目と孤立感に苛まれる中、彼が唯一心を開いたのが、同じように孤独を抱えるスコーピウス・マルフォイでした。

父親であるハリーとの関係はぎくしゃくし、どうすれば良いか分からない焦燥感から、彼はある無謀な計画を思い立ちます。偉大な父に反発し、自分自身の力で何かを成し遂げたいと願う彼の行動が、物語を大きく動かしていくことになるのです。

スコーピウス・マルフォイ

©TBS/ホリプロ

スコーピウス・マルフォイは、ドラコとアストリア・グリーングラスの間に生まれた一人息子。

しかし、かつての父親やマルフォイ家が抱えていた純血主義的な思想とは無縁の、非常に心優しく知的な少年です。彼は常に物静かで、魔法の歴史や書物をこよなく愛する博識な一面を持っています。

©TBS/ホリプロ

その一方で、彼の学生生活は「ヴォルデモー卿の隠し子ではないか」という、根も葉もない悪質な噂によって常に暗い影が落とされています。この噂のせいで周囲から忌み嫌われ、深い孤独を抱えていましたが、ホグワーツ特急でアルバスと出会ったことで、生まれて初めて心から信頼できる親友を得ます。

アルバスが父親との関係に悩み、危険な道へと進もうとする時も、スコーピウスは常に彼の側に寄り添い、その誠実さと揺るぎない友情で親友を支え続けます。

時にはユーモアを交えながら、物語の中で良心の光として輝く、非常に重要なキャラクターです。

劣等感や疎外感に苛まれるアルバスとはお互いに支えあい、親友になっていくのです。彼の存在がなければ、アルバスの冒険は全く違ったものになっていたでしょう。

ハーマイオニー・グレンジャー

©TBS/ホリプロ

かつての「学年一の秀才」は、その類まれな知性と揺るぎない正義感でキャリアを積み上げ、今や魔法界のトップである魔法大臣という要職に就いています。

その聡明さと決断力は健在で、山積する魔法省の課題に日々毅然と立ち向かっています。物語の中で新たな危機が訪れた際も、彼女は魔法大臣として冷静に事態を分析し、魔法界の秩序を守るために奔走します。

一方で、長年の親友であるハリーが父親として悩む姿を誰よりも案じ、時には厳しくも的確な助言を与える、頼れる存在でもあります。

夫であるロンの陽気さに支えられながら、娘のローズを育てる母親としての一面も描かれており、公人としての顔と、妻であり母であるプライベートな顔の両方が描かれています。

論理的で規則を重んじる彼女の姿勢は、時として規則を破ろうとするハリーたちと対立することもありますが、その根底には常に友人や魔法界全体を想う深い愛情があります。

ロン・ウィーズリー

©TBS/ホリプロ

ハリーの生涯の親友であり、ハーマイオニーの夫。

兄のジョージと共に経営するいたずら専門店「ウィーズリー・ウィザード・ウィーズ」は大成功を収めており、幸せな家庭生活を送っています。

大人になっても彼の陽気で楽天的な性格は全く変わっておらず、物語がシリアスな局面を迎える中でも、絶妙なタイミングでジョークを飛ばしては場を和ませる、不可欠なムードメーカーです。

©TBS/ホリプロ

魔法大臣である妻ハーマイオニーや、魔法法執行部長として苦悩するハリーとは異なり、彼は権力や地位とは少し離れた場所から、常に友人や家族を温かく見守っています。

その気取らない優しさと、何があっても揺るがない友情は、過去のトラウマや現在の悩みに苛まれるハリーにとって、かけがえのない救いとなっています。

一見お調子者のように見えて、物事の本質を突く鋭い一言を発することもあり、彼の存在が大人になったトリオの絆を繋ぎ止める、重要な役割を果たしているのです。

ドラコ・マルフォイ

©TBS/ホリプロ

かつてはハリーの宿敵であり、純血主義を掲げるマルフォイ家の跡取りとして、闇の陣営に身を置いた過去を持つ人物です。

しかし、ヴォルデモー卿との最終決戦を経て、彼の価値観は大きく変化しました。今では亡き妻アストリアを深く愛し、その忘れ形見である一人息子スコーピウスの幸せを何よりも願う、献身的な父親となっています。

スコーピウスが悪質な噂に苦しめられていることに心を痛めており、息子を守るためならば、かつてのプライドを捨てて頭を下げることも厭いません。

©TBS/ホリプロ

物語の序盤では、息子たちの友情を介して、長年の宿敵であったハリーと不本意ながらも関わることになります。しかし、互いの息子が引き起こす危機に直面する中で、彼らは「父親」という同じ立場で悩みを共有し、いがみ合いながらも次第に協力し合うという、かつては想像もできなかった関係を築いていきます。

皮肉屋な物言いは健在ですが、その奥に隠された深い愛情と悲しみが、彼のキャラクターに驚くほどの深みを与えています。

ジニー・ポッター

©TBS/ホリプロ

ジニー・ポッター(旧姓ウィーズリー)は、ハリー・ポッターの妻で、ウィーズリー家の末っ子です。

「ハリー・ポッター」シリーズの初めは少し控えめな性格でしたが、非常に勇敢で、強い意志を持った人物です。

「呪いの子」では、家族を支える強い母親の役割を果たし、ハリーと共に子どもたちの成長を見守ります。ジニーは、母親としても依然として非常に強い意志を持ち、家族のために最善を尽くすのです。

ジニーはハリーと結婚し、日刊予言者新聞のスポーツ担当編集者として働いています。
ハリーを支える妻であると同時に、彼が自分の過去と向き合いながら、息子アルバスとの関係にもがく姿を見守り続けています。ハリーが眠れないほど悩んでいることを理解し、時には妻である自分にさえ心を閉ざしてしまうことを知っているのです。

デルフィー

©TBS/ホリプロ

物語の序盤でアルバスとスコーピウスが出会う、ミステリアスで魅力的な若い魔女です。

彼女はハリーの過去のある出来事に関係しており、その悲劇を正したいと願うアルバスの思いに共感し、二人の危険な冒険を後押しします。明るく、少し風変わりな雰囲気を持つ彼女ですが、その行動や言動には多くの謎が秘められています。

彼女が本当に味方なのか、そしてその真の目的は何なのか。

物語が進むにつれて、彼女の存在が持つ意味が明らかになっていき、物語全体を大きく揺るがす鍵を握る、非常に重要なキャラクターです。

日本で観られる?どこでやってるの?チケットは?

2022年に、東京・TBS赤坂ACTシアターで日本語版の舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』が開幕しました(2025年現在もロングラン上演中)。

チケットは、公式サイトまたはプレイガイド(e+、チケットぴあ等)から購入可能で、先行抽選や当日券もあります。事前予約が必須な人気舞台なので、予定は早めにチェックするのがオススメです。

上演時間は?

目安は3時間40分(休憩込み)です。

オペラグラスの貸し出しはある?

劇場での貸し出しは行なっていないので、持参する必要があります。

座席表は?

出待ち・入り待ちについて

日本公演については、TBS赤坂ACTシアター付近や、その他の場所での出演者の入待ち・出待ちは全面的に禁止されています。

ロンドン公演、ニューヨーク公演については、スタッフによる誘導のもと出待ちでのサイン・写真対応を行なっています。

アクセス

東京メトロ 千代田線 「赤坂駅」3b出口より徒歩1分
東京メトロ 銀座線・丸の内線 「赤坂見附駅」10番出口より徒歩8分
東京メトロ 銀座線・南北線 「溜池山王駅」7番出口より徒歩7分

映画との関係性は?観劇前に何を予習すべきか?

『呪いの子』は独立した舞台作品として楽しめますが、ハリー・ポッターシリーズの過去の出来事を知っていると、登場人物たちの会話の深みや行動の背景が理解でき、感動が何倍にも膨れ上がります。

【必須】『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』|物語の出発点

 

©TBS/ホリプロ

最低限これだけは押さえておきたいのが、映画シリーズ最終作のラストシーンです。

舞台『呪いの子』は、ホグワーツの戦いから19年後、ハリーたちが我が子を9と4分の3番線から送り出す、あのエピローグの場面から完全に地続きで始まります。

誰が誰と結ばれ、どんな子どもがいるのかを把握しておくことで、冒頭からスムーズに物語に入り込むことができます。

【必須】『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』|過去の後悔の象徴

©TBS/ホリプロ

この作品で描かれる「三大魔法学校対抗試合」と、その悲劇的な結末は、『呪いの子』の物語全体の根幹を成す、非常に重要な出来事です。

特に、ハリーの目の前で命を落としたホグワーツの同級生、セドリック・ディゴリーの存在は、大人になったハリーの心に深い後悔として刻まれており、アルバスが冒険に乗り出す大きな動機となります。

この事件を知っているかどうかで、物語の切実さが全く違ってきます。

【鍵】『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』|危険な魔法アイテム「逆転時計」

©TBS/ホリプロ

アルバスたちの冒険のキーアイテムとなる「タイムターナー(逆転時計)」

このアイテムがどのようなルールを持ち、過去への介入がいかに危険を伴うものであるかは、『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』で詳しく描かれています。ハーマイオニーが授業を掛け持ちするために使った魔法アイテムで、慎重な取り扱いが必要とされていました。

しかし『呪いの子』では、この道具を使って過去を変えようとする試みが物語を混乱させ、大きな“もしも”の世界を生み出してしまいます。

時間をいじることの危険性と、わずかな行動が未来を大きく左右するというテーマを理解しておくと、アルバスとスコーピウスの行動がいかに無謀で、ハラハラするものかがより深く理解できるでしょう。

¥4,635 (2025/10/23 12:46時点 | Amazon調べ)

地域別公演情報

パレス劇場
(ロンドン)

カラン劇場
(サンフランシスコ)

リリック劇場
(ニューヨーク)

TBS赤坂ACTシアター
(東京)

最新ニュース

Read More

グッズ

オンラインストア

公式オンラインストアで購入することができます。

まとめ|“観る前に予習しておく”ともっと楽しめる!

『ハリー・ポッターと呪いの子』は、ハリーたちの「その後」を描いた、J.K.ローリング公認の舞台作品です。

物語の中心は、ハリーの次男アルバスとマルフォイ家の息子スコーピウス。2人の友情と、親世代との葛藤、そして“過去”を変えてしまう大きな魔法が描かれます。

初心者でも十分に楽しめる一方で、原作や登場人物の背景を少しでも知っておくと、物語の深さや感動がぐっと増します。

ポイント

  • 「これって映画なの?舞台なの?」→ 舞台作品(日本語版は東京で上演中)
  • 「ストーリーは難しい?」→ 親子ドラマ+タイムトラベルが軸でわかりやすい
  • 「予習は必要?」→ 知っておくと感情移入しやすいが、知らなくてもOK

原作ファンも、初めての人も、それぞれの視点で新たな魔法体験ができる作品です。まずはあらすじや登場人物を軽く予習して、ぜひ劇場で魔法の続きを体感してみてください!

【参考】
舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』公式Webサイト(2025年3月6日)

WIZARDING WORLD characters, names, and related indicia are © & ™ Warner Bros. Entertainment Inc. Publishing Rights © JKR. (s25)