「魂を7つに分ける――それが“最強”の存在への道だと信じていた」
前回の記事では、分霊箱が「魂を引き裂く禁断の魔法」であり、不死をもたらす代償として計り知れないリスクを伴うことを解説しました。
自身の魂という最も大切なものを傷つける魔法に、なぜヴォルデモートはそこまでして手を出したのでしょうか?そして、なぜ彼は分霊箱の数を「7つ」と定めたのでしょうか?
今回の記事では、ヴォルデモートが分霊箱を作成した理由、そして彼がなぜ7という数に異常にこだわったのかを解説していきます。
Contents
ヴォルデモートが分霊箱を作成した理由|死への異常な拒絶
ヴォルデモート卿が分霊箱という禁術に手を出した背景には、いくつかの複雑な要因が絡み合っています。
根源的な恐怖|死への異常な拒絶
ヴォルデモートが分霊箱を作った最も強い動機は、「死」に対する異常な恐怖と拒絶でした。
彼は誰よりも死を恐れ、決して死ぬことを受け入れられないという強い思いを抱いていたのです。
孤児時代の経験と「特別」への渇望
ヴォルデモートが分霊箱を作った動機は、死への恐怖だけでなく、彼の孤児としての経験にも深く根ざしています。
両親を知らず、愛情を知ることなく孤児院で育ったトム・リドルは、常に不安定で孤独な環境にいました。
こうした経験が、彼に深い不安と、「自分は特別な存在であり、誰にも依存せず、そして決して滅びてはならない」という強い思いを植え付けたのです。
この「特別」への渇望は、やがて自身を絶対的な存在、すなわち「神」のように見なす自己神格化の思想へと繋がっていきました。分霊箱は、自身を神聖視し、永遠の存在たらんとした、彼の歪んだ試みでもありました。
不死となって永遠に支配したい野望
ヴォルデモートが不死を求めたのは、単に死を恐れたからだけではありません。
それは、魔法界の頂点に立ち、永遠に支配し続けたいという彼の途方もない野望と深く結びついていたのです。
分霊箱による不死は、自らが築き上げた王国を永遠に維持し、全ての魔法使い、そしてマグルをも支配するという、その歪んだ野望を実現するための絶対条件でした。そして、分霊箱こそが、彼の不死への渇望を満たす究極的な手段だったのです。
ヴォルデモートが「7つ」の分霊箱にこだわった理由
ヴォルデモートの分霊箱に関する最も謎めいた点の一つは、彼が「7つ」の分霊箱を作ろうとした事実です。
単に不死になるためなら、魂を二つに裂き、一つだけ分霊箱を作れば十分だったはずです。
なぜ彼はそこまでして7という数にこだわったのでしょうか?
魔法界における「7」という数字の特別な意味
ヴォルデモートが分霊箱の数を「7つ」にこだわった理由は、単なる思いつきではありませんでした。それは、魔法界で「7」が特別視されているという事実が深く関係していたのです。
魔法界では、「7」はしばしば、完全性、幸運、そして神秘的で強力な魔法の力を象徴する数として扱われます。ヴォルデモートもまた、この「7」の持つ力や意味を信じていた可能性が高いでしょう。
自身の魂をこの完璧な数に分けることで、最強の魔法使いとして何者にも破られない絶対的な存在になれると考えたのです。
J.K.ローリング自身も、この数字の重要性について言及しています。
7は魔法界では特別な数字です。完全性、強さ、神秘を象徴しています。
― J.K.ローリング(2007年インタビュー)
魔法界で特別視される「7」の例
魔法界で「7」が特別視されていることは、物語の様々な場面からも見て取れます。
ヴォルデモートが影響を受けた可能性のある、魔法界における「7」の代表的な例を見てみましょう。
- ホグワーツの学年の数: ホグワーツ魔法魔術学校での教育課程は、入学から卒業まで7年間です。物語の中心であるハリーたちも、この7年間で成長し、最大の敵と対峙します。
- ホグワーツの主要な教科の数: O.W.L.試験の対象となる主要な教科は合計7科目です。
- クィディッチの選手の数: 各チームは、シーカー1人、チェイサー3人、ビーター2人、キーパー1人の合計7人で構成されています。
- ウィーズリー家の子供たちの数: アーサーとモリーの間には、7人の子供たちがいます。
- ホグワーツの隠し通路の数: ホグワーツの敷地内には7本の隠し通路が存在します。
- ホグワーツの寮監の鍵: 秘密の部屋を開けるためには、7人の寮監に相当する力が必要であると示唆されます。
- ハリー・ポッターシリーズの巻数: 原作小説は、全7巻で構成されています。これは物語そのものの「完全」を示すかのようです。
これらの例からもわかるように、「7」は魔法界のあらゆる場面で重要な数字として登場しているのです。
ヴォルデモートの計画|6つの分霊箱+本体
ヴォルデモートが分霊箱の数を「7つ」と決めた際の当初の計画は、彼自身を含む合計「7つの魂の断片」を作り出すことでした。具体的には、6つの分霊箱に魂の断片を封じ込め、残りの一つを自身の肉体(本体)に残すというものです。
彼が選んだ分霊箱の器は、自身の過去や血筋にゆかりのある象徴的な物でした。ヴォルデモートは、この7つの断片によって、絶対的な安全と完璧な不死が得られると信じていたのです。
それぞれの分霊箱の詳細は第3回で解説します。
7は最も魔力のある数字だ。完璧な数。それに、自分の魂が完全に安全になるなら、それ以上のことはない。
― 若き日のトム・リドルがホラス・スラグホーンに語った言葉(ダンブルドアの回想より)
計画の誤算|ハリー・ポッターという「第8の分霊箱」
しかし、ヴォルデモートのこの「7つの魂」計画は、皮肉にも彼自身の行動によって狂わされることになります。
1981年、赤ん坊だったハリー・ポッターを殺害しようとして跳ね返りの呪文を受けた際、崩壊したヴォルデモートの魂の一部が、唯一生き残ったハリーに意図せず宿ってしまったのです。
これにより、ヴォルデモートの魂は7つではなく、8つ(6つの分霊箱+ヴォルデモート本体+ハリー)に分裂してしまいました。。
ハリー・ポッターという予期せぬ「第8の分霊箱」の存在が、ヴォルデモートの運命を大きく狂わせることになります。
まとめ|分霊箱を作った理由と「7」への執着
今回の記事では、ヴォルデモートが分霊箱を作った理由、そして「7つ」にこだわった理由を解説しました。
ヴォルデモートが分霊箱を作った動機には、根源的な死への恐怖や、孤児時代の孤独と自己神格化、そして永遠の支配欲がありました。
それに加え、彼は魔法界における「7」の特別な意味を信じ、自身の魂を完璧で強力な数に分けることで、絶対的な不死と支配を得ようとしたのです。
特集の次回、第3回の記事では、ヴォルデモートが実際に作り出した7つの分霊箱、そして意図せず分霊箱となったハリーについて、その正体や物語における役割、そして破壊の運命を詳しく追っていきます。ぜひそちらも合わせてお読みください!
WIZARDING WORLD characters, names, and related indicia are © & ™ Warner Bros. Entertainment Inc. Publishing Rights © JKR. (s25)